「うっかり口に入れられた時なんか、その日しばらくはチョコレートが食べられなくなります」

 何度ゼットに騙されて、チョコレートボンボンを口に放り込まれたか分からない。

 エリザが思い出して「恐ろしい……」と呟いていると、ルディオが何事か思い至ったように「なるほど」と相槌を打った。

「あんたがホイホイ他人の菓子に食い付くのって、昔からなんだな」
「ホイホイ食い付いた覚えはないんだけど?」

 ルディオが、残念な物を見る眼差しをした。

「何、その目?」
「さっきのことを思い返させてやりたいな、て……ああ、そういえばクリスティーナ嬢、覚えてるか?」

 悶々とした様子でパクリとケーキを食べた彼が、ふと思い出したようにそう言った。

「ジークの候補の伯爵令嬢で、この前の舞踏会にいた」
「もちろん、とてつもなく可愛かったからね!」

 ジークハルトの肩が、ぴくっと揺れた。ゆっくりフォークを置く様子に気付いて、ハロルドが目を向ける。