女性であると打ち明けられない今は、少女達の反応については諦めるしかない。

「良かったな、ファンからの差し入れが届いたら俺にもちょうだい」
「そっちが本命かっ」

 女性だと分かっていて行ってくる彼が憎たらしくて、エリザは、力を加減してルディオの頭をぽかっと叩いた。

 その時になって、彼女はジークハルトの様子に気付いた。

 妙な表情でぼんやりとしている。まるで茫然という感じに見えるのだが、きっとメイドの突然の行動に驚いてしまったのだろう。

「お疲れ様でした。〝ご褒美〟のキャンディーですよ」

 コートのポケットから取り出して握らせると、ジークハルトはハッとして、曖昧な微笑みを返してきた。

「ありがとう、ございます、エリオ……」

(やっぱり、元気がないみたい?)

 茶会という課題のあとということもあって、疲れているのかもしれない。

 そう思うと悪い気がしたのだが、彼に引き続き案内を頼み、エリザはルディオと第一王子フィサリウスが待つ場所へ向かった。