メイドが数秒遅れて、ハッとしてクッキーを指でつまみ上げた。

 差し向けた彼女の震える指が、エリザの唇を掠り、慎重に口の中にチョコクッキーを入れる。

「――ン。やっぱりうまい」

 クッキーをもぐもぐし、エリザは改めて味を評価した。

 味の感想を伝えている間も、メイドは相変わらず緊張したように真っ赤な顔をしていた。どうやら、不定期に差し入れという活動を行っているメイドのグループがあり、機会があれば、エリザの元へも届けていいかと尋ねてくる。

(なるほど。それを確認するのが本題だったのか)

 機会があるのならまた食べたいとも思う。

「いいよ」

 少し思案して答えると、彼女は感極まったように何度もお礼を言い、それから「今度はもっと美味しく焼いてきますから!」と告げて走り去っていった。

 合流したメイド達と彼女が、何やら古馬を交わして黄色い子を上げる。

「それにしても、不思議な子だったなぁ」

 思ってもいなかった足留めに、赤髪をかきながら踵を返す。