「何?」
「いや、なんでも」

 気のせいかなと彼は頭をかく。

 ジークハルトが小さな課題をクリアしたので、エリザは早速ポケットのキャンディーを探っていた。

 だが、一つの慌ただしい足音が後ろから戻って来た。

「――【赤い魔法使い】様!」

 次の瞬間、ローブの背中不文を思い切り引っぱられてしまい、「うひゃあ!?」と妙な声が出た。

 びっくりしたのか、同じように足を止めたジークハルトの頬が反射的にひきつる。

 エリザを引き止めたのは、先程の中で一番若いメイドだった。ルディオが「おや」と眉を上げる。

「ど、どうしたの、君……?」

 エリザのローブを握ったメイドは、耳まで赤く染めて硬直していた。

 三人の視線を一挙に集めた途端、緊張で唇がふるふると震え、今にも羞恥心で泣き出しそうになる。

 子供や可愛い女の子に泣かれるのは苦手だ。ひとまず慎重に離すように言う。

「も、申し訳ございませんっ。つい、咄嗟で」

 過剰反応でローブを放した彼女が、上目遣いでエリザを見る。