エリオは可愛らしい魔法使いだ。

 不思議な庇護欲をそそられる。ルディオの頭と肩を遠慮なく叩くのだが、基本的に礼儀正しくて控えめで、ジークハルトには触れてこなかった。

 それを思い返したら、再び胸がもやっとした。

「――昨日まで、しばらくは触ってきてくれたのにな」

 残念だ、という気持ちが自然と込み上げた。

 呟きを聞いたのか、警備についていた騎士達がちらりと見てきた。

 その視線を察知して、ハタと自分の状況を思い出す。

 いま、ジークハルトは茶会でフィサリウスの護衛についていた。席についているのは見合いが考えられている令嬢達ばかりだ。

 そのため、現実逃避のようにエリオのことを思い返していた。

 しかし気付いて見ると、茶会はあっという間にお開きとなっていた。

「よく頑張ったね。ジークにしては上出来だったよ」

 フィサリウスが、椅子の背に腕を乗せて振り返ってくる。

 令嬢達が騎士達に案内され、仲の良さを見せつけるように話しながら退出していく。