すると、思い出したと言わんばかりにルディオが表情を変えた。

「あっぶね、忘れてた! 殿下から譲ってもらえるケーキを残したら、バチがあたるな……」
「うん、不敬だよ」
「あのお人は、それだけで不敬にしたりしねぇよ」

 ルディオが陽気に笑った。

「つうかさ、ジークの〝ご褒美〟に俺とエリオも含まれるのって、有りなのか?」
「ジークハルト様のご希望なら、それがご褒美になるんだよ」

 舞踏会以来、ジークハルトは甘い物をよく希望するようになった。

 公爵邸の侍女長モニカに「ご褒美用でしたら、お勧めの店がございます」と紹介された店のキャンディーが良かったのかもしれない。

 彼はあの日以来、自主的にエリザを引き連れて出歩き、すれ違うメイドに耐えると「ご褒美をください」とキャンディーをせがんでくるのだ。

「そんなにキャンディーが好きだとは知らなかったなぁ」

 呟けば、ルディオが首を捻る。

「いや、俺も初耳……最近、なんかよく口に入れてるなぁと思ったら、そのご褒美でもらった分がポケットに入ってたわけか」