「あいつ、普段は温厚なんだよ。ただ、ブチ切れると箍が外れたみたいに破壊神と化す、というか……幼馴染の俺が同じ部隊のフォロー役にあてがわれて、家と出世に響かないよう頼むよって上官や侯爵や殿下からもまた言われて……時々さ、ふっと思うんだ。俺一人には荷が重いんだよなって…………」

 エリザは第三者だが、語るルディオが哀れに思えた。

 その幼馴染の方は、「女性から僕を守って」と彼を頼るらしい。もう十九歳とは思えない台詞で、エリザは首を捻るばかりだ。

「ブキ切れる時点で温厚じゃないよ。大丈夫、そういう人間は結構メンタルが強いから、鍛えれば泣いて逃げ出すなんてしなくなるよ」
「鍛える、か……昨日、女を紹介する気配を見せた隊長の執務室が、あっという間に崩壊したんだよな……」
「…………」

 なんて危険な過剰防衛なのだろう。

 もしや根性が弱いくせに、いつ剣を振り回すか分からない我が儘な令息なのだろうか。