経験になかったものだから、緊張も相まって心臓がすごいことになっている。

 と、ジークハルトが解放してくれた。

 エリザは、呆けたように彼を見上げた。ジークハルトが少し照れたように笑って、指先で頬をかく。

「エリオのおかげで、もう少し頑張れそうです。よければ会場に戻って、最後にデザートを食べませんか?」

 お誘いは嬉しい。しかし、エリザはショックを受けた。

(……これって、もしかしなくても私、肉体レベルで男だと思われてるのでは……?)

 ほろりと涙が出そうになる。

(いや、いやいやいやっ、もしかしたら彼の女性感知能力がショックでいったん壊れただけかもしれないしっ)

 エリザは、そう思うことで女性としての威厳を取り戻そうとした。