なんて緊張感のない会話をしているのだ。エリザは緊張事態だと思って、ぱっと顔を上げてジークハルトに問う。

「あ、あの、ジークハルト様、治療係として目を離すといった失態をしてしまい大変申し訳ございませんでした。その、吐き気や蕁麻疹は?」
「エリオ、その両手はどうしたのですか? 飛びかかる準備ですか?」

(そんな遊びしてねぇよ!)

 きょとんとしたジークハルトには、ほんとにはらはらさせられる。

(こっちは心配でオロオロしているんです!)

 そんな文句を心の中で言い返しながら、エリザは忙しなく彼の周りを歩いて、身体に異常が出ないか待った。だが、数分待っても何も起こらなかった。

「あれ? おかしいな……」

 助かった、という気持ちよりも疑問符が頭に浮かぶ。

 相手が男だと思っているからだろう。ジークハルトは、エリザの呟きの意味が分からない様子で首を傾げていた。

 フィサリウスが、ひっそり息を吐きながら肩から力を抜いた。