「へぇ、それは意外だ。ジークがすごく安定していて前向きに――まぁいいか。私もできる限り協力するから、使えそうな人材や教材があれば躊躇せず手配させればいいよ」

 王太子天下に頼むなんて畏れ多い。

 そもそもラドフォード公爵もそうだが、彼も〝異国から来た強い魔法使い〟に期待し過ぎているのではないだろうか。

 初めて対面したにもかかわらず、フィサリウスの瞳には好奇心の輝きしかないのも不思議だ。

「臨時なので短い間ではありますが、できる限りのことはしたいと考えています。ただ……近いうちに女だとバレてクビになるような気もしますけど」

 彼がその話題を口にしてきた時と同じく、エリザも声を潜める。

「急に辞めさせられることにはならないと思うよ」

 迷わず断言されて、驚く。

 するとフィサリウスが、自身の美貌を最大限に活かすようににっこりと微笑んだ。エリザが胡乱そうにあとずさりすると、彼は面白そうに目を細めた。