すると観察していることに気付いているのか、彼の垂れた瞳が怪しげに細められた。

「初めまして、【赤い魔法使い】の〝エリオ〟殿?」

 その第一声に、「あ」とエリザは察知した。

 彼は『まさにその通り』と言わんばかりに、にっこりと笑ってうえで、曖昧にはせずストレートに口にしてきた。

「こんなに可愛い女の子なのに、どうして皆間違えるんだろうね? ああ、私はレヴァン王国の第一王子、フィサリウス・レヴァンだ。ジークとは幼馴染で、歳は彼より一つ上の二十歳だよ。まぁ君の本名は知らないので、ひとまずのところは〝エリオ〟と呼んでもいいかな?」

 たった短い言葉だけで言い負かされた感があった。

(まさかとは思っていたけど、王族……)

 以前、ルディオもラドフォード公爵も『殿下』と口にしていた。それは、彼のことだったのだ。

「大変失礼をいたしました、殿下」

 エリザは緊張しつつ、胸に手を添えて頭を下げた。