「そ! さすが分かってるじゃん」

 椅子を引いた彼に、紅茶の茶葉を持ってきたと笑顔で手渡され、エリザは途端に顰め面も終わって受け取る。

 実は、彼は伯爵家の三男だった。

 エリザが買えない高い値段の紅茶缶を、来訪料のようにお土産で持ってきてくれた。

「初めて押しかけてきた時も、そうだったじゃん」

 エリザは、切れそうだった新たな紅茶の追加を眺める。

 それを、小さな円卓に頬杖をついたルディオが微笑ましげに見つめた。

「ふふふ、嬉しそう」
「うるさい」

 そこまで顔に出ていないはずだが、と思いつつ準備に取り掛かる。

 その時でさえ、エリザは師匠からもらった魔術師団の団員マントコートは取らなかった。一人で生きていくための教えだ。

 実は、初めて出会った日の翌週に、ルディオは突然訪ねてきた。

『俺、毎日すごく苦労しててさ……愚痴が言エリザ奴もいないから、もう辛くって。頼むエリオッ、俺の悩みを聞いてくれ!』
『……はい?』

 それから、手土産を持って好きなだけ喋っていく日々が始まった。