視線を戻してみると、エレノアとジークハルトの周りに多くの紳士達が集まり始めていた。いったい何事だと思ったら、彼女が専門的な意見を求めて自分から人を集めている。

「うわー、すごい」

 まるで学会会議のような難しい単語が飛び交い出した。ジークハルトは迫るエレノアとの間に紳士をさりげなく置いてはあとずさる、を必死に繰り返している。

(……まぁ、集まっているのが男性だからまだ大丈夫、かな?)

 彼の成長のためにも、せめて数分は頑張ってもらいたい気持ちもあった。

「それで、お話とは?」

 人混みから少し離れた位置で立ち止まった彼に、改めて尋ねた。

 ジークハルトを愛称で呼ぶことから、親しい間柄だとは推測していた。先程のハロルドや、ルディオと同じく〝事情を知る者〟でもあるのだろう。

 けれど、少し、相手の正体に関して嫌な予感も覚えている。

 男が着ている正装服は、身分でも示すみたいなデザインも入っていた。軍服のようにどこかかっちりとしていて、それでいて宝石飾りや金の装飾も多い。