(……誰だろう?)

 生粋の貴族そうだが、これまで見てきた男達と違っていた。

 なんというか、全身にまとっているオーラが飛びぬけてきらきらしているというか……。

「ジークハルト様のお知り合いですか?」

 また声を掛けられた可能性を考え、こそっと尋ねた。

 彼が顎をなぞりながら、なんだか愉快そうな笑みを浮かべた。

「そうだよ、ジークのことはよく知っている。後ろに控えている君がサポーターだということもね」
「はぁ、そうなのですか。なら今は忙し――」
「彼女は良くも悪くも注目を集めるから、ここではゆっくり話せないね。少しこちらへおいで」

 エリザの意見も待たず、彼が彼女の黒いマントローブをつまんで引っ張った。

「あ、あのっ、私は今、ジークハルト様と離れるわけにはっ――」
「大丈夫だよ。君と少し話がしたいだけだから、ジークから見えない位置までは離れない。あそこは少し賑やかになるだろうからさ」

 そう言った彼が、「ほら、ごらんよ」と指を差した。