彼はエレノアが「とうです」と言わんばかりに同意や共感を求めるたび、引き攣った愛想笑いが強まっていた。

(おい。美女になんて顔をしているんだ)

 羨ましがっている周りの男性達が、かわいそうだ。

 彼女は政治や事業話にも積極的な女性のようで、ぜひ意見を訊きたいとジークハルトに迫る勢いで話しかけ続けている。

(うん、すごく頭がよくて素晴らしい女性だ)

 妖精的美少女も捨てがたいが、これはこれでいい。

 ある種、他の令嬢達にない強烈さが魅力的だった。エリザは、周りの男性達から「踏まれたい……」というやばい願望を聞いたのだが、つい心の中で同意してしまったほどだ。

 その時、不意に後ろから軽く肩を叩かれた。

 ハッとした時、囁かれる声が聞こえた。

「エレノア嬢は、一度話し出すと長いよ」

 そこには、ジークハルトとは違うタイプの美貌を持った青年がいた。ふわりと揺れる淡い金の髪、垂れた切れ長の青い瞳は知性を感じさせるのに、妖艶な笑みが大変マッチして似合っている。