「あなたが『少し話すだけの簡単なこと』と言ってくれたので、なんだかいけそうな気もしてきました」
「その心意気です、ジークハルト様」

 先程の手慣れた社交術を見る限り、少し我慢すれば問題なくいけるように思う。

 ただ、令嬢と言葉を交わすだけのミッションだ。

 まるで大舞台に立つような意気込みを見せるジークハルトを前に、エリザはその本音は言わなかった。

 事前にラドフォード公爵からは、話しをする令嬢達について教えられていた。

 今日、ジークハルトが話さなければならない令嬢は、三人。

 まず向かったのは、金の髪を大きく縦ロールにセットした侯爵令嬢だ。背丈はエリザより少し高く、強そうな目をした人形のような美しい少女だった。

 それを、エリザはジークハルトの少し後ろから付き人のごとく見つめた。

「お久しぶりですわね、ジークハルト様。お噂はかねがね聞いておりますわ。お忙しいでしょう、体調にはお気を付けくださいませ」