エリザはそのケーキを皿に取ると、美味しさを伝えるべく先に食べて見せた。

「うーんっ、うまい!」

 ジークハルトに言ったつもりなのに、近くにいた人達が振り返ってきて驚いた。言い方に品がなかっただろうか。

 目を丸くしていると、彼がテーブルに並んでいるケーキをゆっくり眺めた。

 彼はエリザと同じ物を選ぶと、上品にフォークで切り分けて形の良い唇に運んだ。そんな姿さえ美しくて、エリザは『世は不公平……』と密かに思った。

「確かに、――甘いですね」
「感動が薄いですよ、ジークハルト様。甘い物はそこまで進んで食べない方ですか? 大丈夫です、残ったら私が食べて差し上げますので」

 つい、下心が出た。滅多に食べられない贅沢品だ。

「そう、なんですか」

 どこか考えるような声で言って、ジークハルトが手元のケーキとエリザを交互に見た。そして、不意に彼がケーキをフォークで少しすくってエリザへ向けた。

「食べます?」