「すみません。緊張のせいで調子が悪いみたいです……約束は忘れていません。ミッションコンプリートを目指すためにも、糖分を摂取しようと思います」

 心構えは立派だと思えた。

「もしかして、ここに来るまで一人だったのですか? 公爵様は?」
「父は知り合いに声を掛けられて、僕はあなたを見付けていたので付き添いを断り、真っすぐここまで来ました。ルディオが途中で加勢してくれたので」

 言いながら目を向けられ、ハロルドが少し緊張したように背を伸ばす。

「そ、そうか。ルディオに会えて良かったな」
「はい。デビュタントしたての子に声を掛けられて苦戦しそうになったところ、彼があとを引き受けてくれて助かりました」

 この先で、そんなことが起こっていたとは気付かなかった。

「お前も御苦労だったな。えーと、俺は一度、殿下の様子を見てくるよ」

 ハロルドはそう言うなり、あっという間に離れて人混みの中に入っていった。

 見送ったエリザを、ジークハルトが横目でじっと見つめる。