「はい、私はあなたの治療係ですよ」
「それでは、なぜ僕ではなくハロルド隊長といるんですか? 壁際なんて人が少ないのですから、親密な話ができる距離ではないですか」

 妙な質問で、首を捻った。

「私は、ここでジークハルト様を待っていたんですよ。そうしたら、治療のご協力でハロルド様が色々と、あなた様の仕事の様子などを教えてくれたのです」

 手で示すと、ジークハルトが背後のハロルドを見た。

「よ、よぉ、昨日の勤務ぶりだな。お前も元気そうで何よりだ」

 ハロルドの口元が、ややひきつっている。

 たぶん、早く舞踏会を終えたいのだろうな、とエリザはジークハルトのぴりぴり具合を思った。

「疲れているようですし、少しお休みされてから行動しますか?」

 本日の〝課題〟はこれからだ。

 ひとまず、休みを兼ねてから行動することを提案してみた。

 するとジークハルトが、張っていた気をほぐすように吐息を細く吐いた。まとっていた鋭い気配を消し、エリザを見下ろす。