声を聞いたハロルドも、彼に気付いた。この会場ではまだ顔を合わせていなかったのか、挨拶しようとして不意に言葉を詰まらせた。

 先程までの王子様的な表情はどうしたのか、ジークハルトはどこか不本意そうに眉を潜めていた。

 かなり雰囲気がぴりぴりしているのは、エリザも感じ取れた。

 長らく父親に付き合わされたせい?と彼女は小首を傾げる。

「ジークハルト様、お疲れ様です」

 声を掛けた途端、駆け寄ってハロルドを背に隠されてしまった。

「あなたは、僕の治療係でしょう」

 初めて聞くような、少し不機嫌さの滲む声だった。

 エリザは、上司の間に割って入ったのはマナー違反ではないかと驚いた。ハロルドも呆気に取られた顔をしている。

「えーと……」

 ジークハルトの後ろを気にしたら、ハロルドがなぜか慌て手を振ってきた。

 気にせず、まずはジークハルトに対応せよということだろう。

 エリザはそう受け取り、ハロルドから彼へと視線を戻した。