「ジークは、世間的に『原因不明の魔法具の誤作動の影響で、身体に不調が出る』ということになっています。専属医を設けているのは、今のところラドフォード公爵家だけです。次の人物がどんな者なのか、興味があるのでしょう」

 とすると、しばらくは『専属医』としても注目を集めてしまうようだ。

(赤髪と赤目でも、元々悪目立ちしていたから)

 見られてしまうことについては、諦めるしかなさそうだ。フードを被れば視線も気にならない。

「ハロルド様、親切にありがとうございました」

 おかげで城でのジークハルトの状況もつかめてきた。

 すると、あたりさわりなく自然と笑いかけた彼女の顔を見て、ハロルドがぽかんと口を開けた。

「どうされました?」
「あっ、いえ。これは失敬。噂と違って、あまりにも可愛らしいもので」

 急ぎ視線をそらし、彼が咳払いした。

 その時、人込みをかき分けてジークハルトが来るのが見えた。

「エリオッ」