「えっと、敬語は不要ですミュンゼン様」
「私のことは、ハロルド、とお呼びください」

 騎士のごとく例をされ、エリザは「ええぇ」と戸惑いの声をもらした。

「あ、あの、どうぞ気楽に話してください。恐縮してしまいます」
「うちのジークが世話になっていますと、強い魔法使い様をそのへんの若造扱いはできません」

 やはり、魔法使いを尊敬する思考もそうさせているらしい。

 ついでに、普段の様子を聞けるチャンスだ。

 エリザは、空になった皿をテーブルに置いた。礼儀として口も拭ってから、改めて彼と向かい合う。ハロルドは笑顔で待ってくれていた。

「その、もしお時間があるのでしたら、少し職場でのジークハルト様について教えてもらってもよろしいでしょうか……?」
「もちろんです。少しでもご協力できればと思い、会いに来ました」

 なんとできる男だろうか。

 近衛騎士隊長の頼もしさに、エリザは目をついきらきらさせてしまった。彼が「ぷっ」と噴き出した。