「果凛さん、お久しぶりです」
僕はそちらを向いて挨拶をする。未城さんも驚きながら、お久しぶりです、と嬉しそうに微笑んだ。
「連絡出来なくてごめんなさい、ちょっと忙しかったの」
未城さんは席を立ち、近くの椅子を移動させてから、カフェモカでいいですか?と果凛さんに聞いてカフェモカを入れに行った。
「忙しかった、って何をしてたんですか?」
「人を遊び人みたいに言うの辞めてくれる?」
はぁ、と小さくため息をついて果凛さんは椅子に座る。未城さんが来てから話すと言って、彼女はスマホを少しいじった後、バッグにしまって僕の方を数秒見つめた。
「……なんか顔疲れてない?」
確かに、僕は最近仕事で忙しかったが、そんなに顔に出ているだろうか。
「まぁ、少し疲れてますけど……」
「ちゃんと寝た方がいいわよ。コーヒーなんか飲むと寝れなくなるから、ホットミルクとかにすればいいのに」
「お気遣いありがとうございます」
別に、と相変わらずのツンとした態度で果凛さんはまた僕から目をそらす。こっちが本当の果凛さんで、同窓会やレンタル彼女のときの果凛さんは作り上げられた女性なのだろうと、そう思った。
ツンとした態度は少し強いが、心配してくれるところなどを見るとやはりこの人はいい人なのだ。
「まぁ、仕事に由那のこととなったら水戸瀬さんも疲れるよね。あんまり無理しないように」
「はい。でも、僕は今回役に立てなそうなので、果凛さんに頼ってますけどね」
未城さんがカフェモカを果凛さんの前に出し、また席に座る。果凛さんはカフェモカを一口飲んでから、話を始めた。
「あの同窓会の後、加賀屋と何度か飲みに行ったの。相変わらずのクズだったけどね」
「なら、どうして?」
未城さんはほんの少し首を傾げて問いかける。僕も嫌いな連中とは関わらないタイプの人間だからその気持ちがわからない。
「アイツ、友人関係だけは広いの。高校の時の友達とまだ繋がってるくらいね」
なるほど、と呟いてコーヒーを一口飲む。未城さんはまだ首を傾げていた。
「他にも由那と仲が良かった人は多いから、加賀屋からできるだけその人たちの連絡先とか職場を教えてもらってたの」
それならなぜ何日も忙しかったんですか、と未城さんが果凛さんに問いかける。すると果凛さんはため息をついた。なんだか大袈裟なくらいのため息が、その大変さを物語っている。
「アイツ、一回の食事で一人しか教えてくれなかったのよ」
しかも割り勘か奢りだったそうで、果凛さんは心も財布もダメージを受けたそうだ。
「本当に加賀屋さんってすごい人なんですね……」
「あんなのとほんの少しでも付き合っていたかと思うと黒歴史よ」
果凛さんはトートバッグから本を取り出してテーブルの上に広げる。それは卒業アルバムだった。果凛さんはもちろん乗っていたが、卒業できなかった由那さんの写真も、あった。一人だけ卒業写真の顔じゃない満面の笑みを浮かべた由那さんは、僕にとっても懐かしい顔だった。
「由那さん……」
「感傷に浸るのやめて。私だってこれを開くのは本当に久しぶりなんだから」
果凛さんは連絡先や職場がわかる人たちを僕らに説明した。そして、由那さんと仲が良かった人の話をして、由那さんが死ぬ前に関わっていた人たちを絞って僕らは次話を聞く人を決める。
「でも、次の人たちに行く前に、加賀屋さんにも話を聞かないと」
「そう、花那さんのいう通り。でもアイツ、当時のことは覚えてないって、何度聞いても言うの」
お手上げ、と果凛さんは呆れたように言った。でも僕らは果凛さんの過去の話を聞いた時、絶対に加賀屋と由那さんには何かあったと思っていたのだ。もしそれが、果凛さんには話しにくいことだったとしたら、果凛さんが何度聞いても教えてくれるはずがない。
「なら、僕が聞いてみます。加賀屋に連絡を取ってもらってもいいですか?」
僕が、由那さんのことを調べると決めたのだ。なら、頼ってばかりではいられない。
果凛さんは驚きつつ、僕に任せてくれることになった。
僕はそちらを向いて挨拶をする。未城さんも驚きながら、お久しぶりです、と嬉しそうに微笑んだ。
「連絡出来なくてごめんなさい、ちょっと忙しかったの」
未城さんは席を立ち、近くの椅子を移動させてから、カフェモカでいいですか?と果凛さんに聞いてカフェモカを入れに行った。
「忙しかった、って何をしてたんですか?」
「人を遊び人みたいに言うの辞めてくれる?」
はぁ、と小さくため息をついて果凛さんは椅子に座る。未城さんが来てから話すと言って、彼女はスマホを少しいじった後、バッグにしまって僕の方を数秒見つめた。
「……なんか顔疲れてない?」
確かに、僕は最近仕事で忙しかったが、そんなに顔に出ているだろうか。
「まぁ、少し疲れてますけど……」
「ちゃんと寝た方がいいわよ。コーヒーなんか飲むと寝れなくなるから、ホットミルクとかにすればいいのに」
「お気遣いありがとうございます」
別に、と相変わらずのツンとした態度で果凛さんはまた僕から目をそらす。こっちが本当の果凛さんで、同窓会やレンタル彼女のときの果凛さんは作り上げられた女性なのだろうと、そう思った。
ツンとした態度は少し強いが、心配してくれるところなどを見るとやはりこの人はいい人なのだ。
「まぁ、仕事に由那のこととなったら水戸瀬さんも疲れるよね。あんまり無理しないように」
「はい。でも、僕は今回役に立てなそうなので、果凛さんに頼ってますけどね」
未城さんがカフェモカを果凛さんの前に出し、また席に座る。果凛さんはカフェモカを一口飲んでから、話を始めた。
「あの同窓会の後、加賀屋と何度か飲みに行ったの。相変わらずのクズだったけどね」
「なら、どうして?」
未城さんはほんの少し首を傾げて問いかける。僕も嫌いな連中とは関わらないタイプの人間だからその気持ちがわからない。
「アイツ、友人関係だけは広いの。高校の時の友達とまだ繋がってるくらいね」
なるほど、と呟いてコーヒーを一口飲む。未城さんはまだ首を傾げていた。
「他にも由那と仲が良かった人は多いから、加賀屋からできるだけその人たちの連絡先とか職場を教えてもらってたの」
それならなぜ何日も忙しかったんですか、と未城さんが果凛さんに問いかける。すると果凛さんはため息をついた。なんだか大袈裟なくらいのため息が、その大変さを物語っている。
「アイツ、一回の食事で一人しか教えてくれなかったのよ」
しかも割り勘か奢りだったそうで、果凛さんは心も財布もダメージを受けたそうだ。
「本当に加賀屋さんってすごい人なんですね……」
「あんなのとほんの少しでも付き合っていたかと思うと黒歴史よ」
果凛さんはトートバッグから本を取り出してテーブルの上に広げる。それは卒業アルバムだった。果凛さんはもちろん乗っていたが、卒業できなかった由那さんの写真も、あった。一人だけ卒業写真の顔じゃない満面の笑みを浮かべた由那さんは、僕にとっても懐かしい顔だった。
「由那さん……」
「感傷に浸るのやめて。私だってこれを開くのは本当に久しぶりなんだから」
果凛さんは連絡先や職場がわかる人たちを僕らに説明した。そして、由那さんと仲が良かった人の話をして、由那さんが死ぬ前に関わっていた人たちを絞って僕らは次話を聞く人を決める。
「でも、次の人たちに行く前に、加賀屋さんにも話を聞かないと」
「そう、花那さんのいう通り。でもアイツ、当時のことは覚えてないって、何度聞いても言うの」
お手上げ、と果凛さんは呆れたように言った。でも僕らは果凛さんの過去の話を聞いた時、絶対に加賀屋と由那さんには何かあったと思っていたのだ。もしそれが、果凛さんには話しにくいことだったとしたら、果凛さんが何度聞いても教えてくれるはずがない。
「なら、僕が聞いてみます。加賀屋に連絡を取ってもらってもいいですか?」
僕が、由那さんのことを調べると決めたのだ。なら、頼ってばかりではいられない。
果凛さんは驚きつつ、僕に任せてくれることになった。