さゆと付き合い始めて、初めてのデートの日。
少しでもふつーの恋人っぽいことを、と考えて外で待ち合わせをしようと思ったのだけど……だめだ。こんな可愛いさゆを一人で歩かせられない。
部屋で一人で服を選んでいたらしいさゆは、いつにも増して愛らしくて。
結局、手を繋いで一緒に家を出ることになった。
――さゆが俺を好きになってくれたのは、奇跡としか言いようがない。
旭のこともあって一層告白する気をなくしていた俺に、その気持ちを素直に口にさせてしまうのだから。
……さゆほど、俺の本音を引き出せる人はいないだろう。
今までも、この先も。
だからさゆには、嘘は通用しないと心得ている。
いや、俺がさゆに嘘をつきたくないんだ。
さゆが純粋だから、少しでも近い存在でいたくて。
ほかの誰よりも、俺が、さゆに相応しくいたいから。