頭がズンと重くなり、目の前がクラクラしてきた。
「なんか、マジで大丈夫?」
「……うん」
「てか帰る? 帰ったら? ヤバそう」
「いやそんな、来たばっかりだし……ちょっと頭が重いだけ」
そう、重いだけ。だから大丈夫だと自分に言い聞かせて二人で教室に向かったけれど、いつものみんなの声が集まってくるにつれて心臓の動きが大きくなり、息がどんどん苦しくなってくる。手足が痺れ出して、呼吸が速く、不規則になるのが直せなくて、急に目の前がチカチカし始めて——立っていられなくなった私に周りが慌てているのを感じながらもそれどころでは無くなっていた、その時だ。
「吸い過ぎ吸い過ぎ。吐いて、ゆっくり」
その声と共に、背中にそっと手が置かれた。でもハッハッという息遣いでパニックになっている私には訳が分からなくて、
「大丈夫、ちゃんと落ち着くから。吐く時細く吐くと良いよ、ストローの口。分かる?」
耳に入ってくる冷静な口調に、誰かが私を助けようとしてくれている事だけが分かって、必死にその言葉に耳を傾ける。その人がなんて言ってるのかを追う事で精一杯だった。
「なるべく長く吐くよ。吸わない意識して。吐くよ、ふー、長く吐いて、ふー……吐き切って、ふー……」
辛くて苦しくて、隣にしゃがみ込んで声を掛けてくれる彼の腕にしがみ付いていた。とにかく聞こえてくる声に縋った。息を吸ったら吐く、長く吐く、ふーという声に合わせてゆっくり、長く、何度も何度も繰り返して……そのうちに、しゃくりあげる様に繰り返していた息継ぎが段々ゆっくり落ち着いてきて……。
「……落ち着いた?」
俯く私の頭の上に降って来た声に、うんと頷いた。ドキドキ心臓はまだ激しく動いていたし、汗もびっしょりかいて手足もすごく冷たかったけれど、呼吸が整えばなんとかなる。ぐったり疲れた私の背中に置かれた手はまだ、優しく上下に摩ってくれているのが分かった。
「保健室行くよ。そこの女子、伝えといて」
「あ、うん。分かった」
「で、そっちはどう? 歩ける?」
背中に手を回し、覗き込んでくる彼——結城君に、もう一度頷くと、よろよろ立ち上がる私を支えながら保健室までの道のりを一緒に歩いてくれた。
その間、何も考えられないくらい疲れた頭と身体は、隣の彼に全てを任せ、頼り切っていた。でも、そんな私に彼は何も言わなかった。
「なんか、マジで大丈夫?」
「……うん」
「てか帰る? 帰ったら? ヤバそう」
「いやそんな、来たばっかりだし……ちょっと頭が重いだけ」
そう、重いだけ。だから大丈夫だと自分に言い聞かせて二人で教室に向かったけれど、いつものみんなの声が集まってくるにつれて心臓の動きが大きくなり、息がどんどん苦しくなってくる。手足が痺れ出して、呼吸が速く、不規則になるのが直せなくて、急に目の前がチカチカし始めて——立っていられなくなった私に周りが慌てているのを感じながらもそれどころでは無くなっていた、その時だ。
「吸い過ぎ吸い過ぎ。吐いて、ゆっくり」
その声と共に、背中にそっと手が置かれた。でもハッハッという息遣いでパニックになっている私には訳が分からなくて、
「大丈夫、ちゃんと落ち着くから。吐く時細く吐くと良いよ、ストローの口。分かる?」
耳に入ってくる冷静な口調に、誰かが私を助けようとしてくれている事だけが分かって、必死にその言葉に耳を傾ける。その人がなんて言ってるのかを追う事で精一杯だった。
「なるべく長く吐くよ。吸わない意識して。吐くよ、ふー、長く吐いて、ふー……吐き切って、ふー……」
辛くて苦しくて、隣にしゃがみ込んで声を掛けてくれる彼の腕にしがみ付いていた。とにかく聞こえてくる声に縋った。息を吸ったら吐く、長く吐く、ふーという声に合わせてゆっくり、長く、何度も何度も繰り返して……そのうちに、しゃくりあげる様に繰り返していた息継ぎが段々ゆっくり落ち着いてきて……。
「……落ち着いた?」
俯く私の頭の上に降って来た声に、うんと頷いた。ドキドキ心臓はまだ激しく動いていたし、汗もびっしょりかいて手足もすごく冷たかったけれど、呼吸が整えばなんとかなる。ぐったり疲れた私の背中に置かれた手はまだ、優しく上下に摩ってくれているのが分かった。
「保健室行くよ。そこの女子、伝えといて」
「あ、うん。分かった」
「で、そっちはどう? 歩ける?」
背中に手を回し、覗き込んでくる彼——結城君に、もう一度頷くと、よろよろ立ち上がる私を支えながら保健室までの道のりを一緒に歩いてくれた。
その間、何も考えられないくらい疲れた頭と身体は、隣の彼に全てを任せ、頼り切っていた。でも、そんな私に彼は何も言わなかった。



