「澪、おはよー」
「あ、おはよう。穂乃果ちゃん」
今日は登校中、朝一で穂乃果ちゃんに会ったから、一緒に教室まで向かう。その中で穂乃果ちゃんは、「体調大丈夫?」と私の心配をしてくれた。
「うん。大丈夫だよ」
「ほんと? なんか元気無い感じだけど」
ジッと私を見つめる彼女はいつも察しが良い。その通り。私の体調は正直良くない。昨日の事がずっと消化不良で私の中をぐるぐる巡っているのだ。
私が悪い。彼が悪い。みんなが悪い。私の中でずっと続いているこれは何だろう。
まるで何かの犯人探しだ。何の?と聞かれれば答えは沢山。この頃の私の様子について。私のどうしようもない日常について。流されて合わせるばかりの誰かを悪者にしてしまう、しょうもない私について。
解決策が見つからない今日が、また始まってしまった事について。
「…………」
「澪?」
「……うん。なんか、また今日が始まるなと思って」
「だねー、古典めちゃ怠い。なんであんな眠くなんの? いつの時間でも寝れてしまう」
「ははっ、穂乃果ちゃんどの教科でもそうじゃん」
「ほんとそうだわ」
「まぁ睡眠不足はお肌の大敵と言いますし。眠くさせる向こうが悪い」なんてケロッと開き直る彼女はいつも強い。芯の通った人だと思う。
一般的に悪いとされる様な事だとしても彼女の中のなんらかのルールに則ればそれは正しい事になるし、外野のあれこれと区別して考える事が出来る人だ。自分は自分。やりたいならやれば良いし、嫌なら嫌って言えば良いが出来る人。
だからその外側に居る人間の弱さが分からないのかもしれない。その強さが鋭く人を傷付ける事を。それを良しとしたらその反対が悪しとなる事を。それが今のグループのルールになってしまっている事を。
今日もきっと、私はまた悪い事をする。このルールに則って。どこかの誰かを傷付けて笑う。嘘をついてなりたくない自分になる。
そして今日もきっと、私は私を嫌いになる。これも全部みんなのせいだと、好きなはずの穂乃果ちゃんとみんなのせいにして、全部まとめて嫌いになる。
そう。嫌いだ。みんなの事は嫌いじゃないなんて白々しい。きっともう私は嫌ってる。このグループにも、それを良しとするみんなにもうんざりしている。
……はずなのに、それでも私はその中に居て、それは私も同じで、それなのに心の中でそんな事を思っている私が、穂乃果ちゃんにとって一番嫌な、芯の通ってない最悪な人間。
それが私。私が一番悪い。私が一番汚い。私が一番卑怯。私が——……
……あれ?



