明日もずっと君の隣に

 そしてやれやれと、そのまま一同解散となった。お熱いですね、なんて言葉を残して解決した体で。
 でも、私の中ではもちろん解決なんてしていない。解散したその後もずっとそれが悩みの種となり根付いていた。
 結城君の好きなもの。好きな事。そういうものを私は知らない……そういうもの?
 偶然なのかな。私は結城君に好きなものの話をするし、結城君も興味ありげに聞いてくれるし、結城君は何が好き?って聞いた事もあるけど、あんま思いつかないんだよなーって。それより聞きたいって言ってくれるから、結局いつも私の話ばっかりで……。
 それっておかしいのかな。
 好きなものを人に言うのが苦手なのかもって捉えてたけど、そうじゃないのかも……?


 夜になり、ベッドで寝転んでいるとスマホが鳴った。結城君だ。
 最近では結構な頻度で通話してるから日常の生活に溶け込んでいる。でも今日は結城君が学校を休んでたから連絡無いかなーと思っていた分、驚いて慌てて通話マークに飛びついた。

『あ、穂高さん? もう寝てた?』
「ううん。でも今日は連絡無いと思ってた。忙しかったんじゃない? 用事大丈夫だった?」
『うん、大丈夫大丈夫』

 いつも通りの結城君だ。声の感じも話し方も特に変わった所は感じない。

「どんな用事だったの?」
『んー、まぁ定期健診的なさ』
「病院?」
『うん。でも良くなってるから別に』

 大した事はないんだよと、結城君は大丈夫なのだと全面的に押し出してくる。体調の話はいつもそうだ。良くなってると、結城君は笑う。きっと今もスマホの向こうで笑ってる。

『穂高さんの方はどう? 今日は学校どうだった?』

 話が変わるのに合わせて、私も「うん」と頷きながら切り替えて今日の一日を思い返した。やっぱり一番の出来事といったら昼休みの話かな。

「みんなにさ、デート行った?って訊かれて、行ってないなーって話になった」
『そっか。確かにまだどこも行ってないね。どこ行きたい?』
「それが思いつかなくて……だから結城君の好きな所が良いなーと思うんだけど、どこか行きたい所はある?」

 自然な流れでその話に持って来れた。よしよしと思う。この流れで聞き出すぞ。

『んー、俺はあんまり……』
「あんまり?」
『あー、正直に言うと、あんまり外出るの好きじゃなくて』
「そっかそっか。じゃあ室内が好きって事かな」
『まぁ、うん。そうだね』

 室内か! となるとどこがいいんだろう……あ!

「映画館はどうかな!」
『……映画館』
「うん! 天気関係無いし、観終わった後感想会しようよ〜! きっと楽しいよ。どこが良かったとか教えて欲しい。好きな映画ある?」
『穂高さんの好きなのが良い』
「私のかー」

 とりあえず検索するね、と、通話を繋いだまま映画館のサイトを開いて上映スケジュールを確認する。
 何が良いかなぁ。続編とか分かんないし、でも恋愛物っていうのもちょっと……あ。

「懐かしー。とらえもんやってる……お母さんと観にきてたなぁ」

「泣けるんだよねー」と独り言を呟きながらスクロールしていくと、一つのタイトルが目に入った。

「あ、結城君アクションはどう? 洋画のハイテンション系」
『うん、良いと思う』
「じゃあ候補にして。明日もう一回二人でどれが良いか決めようよ。明日は学校来るよね?」
『うん』
「じゃあまた明日の昼休みにでも」

 そして、「おやすみ〜」と挨拶を交わして通話を切る。結城君の好きな事一つ知れたぞ!と、うきうきしながら明日、一緒に予定を立てるのを楽しみにして目を閉じた。
 

 次の日になり、いつも通りに教室に入ると穂乃果ちゃん達に挨拶をして結城君の席の方を確認する。けれどそこに結城君の姿は無くて、まだ学校に着いていないみたいだった。
 今日はぎりぎりなのかな〜とのんびり考えていると、そのまま朝のホームルームが始まり、あれ?と思う。
 結城君は?

 それからずっと三時間目まで姿を現さなかった結城君がやってきたのは四時間目が始まる頃。
 授業を終えて昼休みを迎えると、普段通りの結城君が何事も無かったかの様に私の元にやって来て、二人で今日も保健室へと向かう事になった。