私達の関係の変化。それはすぐにみんなに知れ渡り、保健室の先生からも、「付き合ってるんだって?」と聞かれた時には驚きつつ、照れながら頷いたものである。
 なんでこんなにも早く知れ渡ったのかというと、それはもちろん私が穂乃果ちゃん達いつものみんなに報告した事が一番の原因なんだけど、それと同じくらいに結城君の態度がガラリと変わったというのもあると思う。

「おはよう穂高さん」
「一緒に帰ろ」
「昼休み空いてる?」

 今までの無口で存在感を消した彼はなんだったのかというくらい、周りを気にせず声をかけてくれる様になったのだ。初めて教室で挨拶してくれたあの時から思ってたけど、結城君は人と話す事が苦手で恥ずかしいとか、そういう事が原因で孤立していた訳では無かったみたい。

「結城君、もっとみんなと話せば良いのに」
「なんで?」

 下校中、隣を歩く結城君に訊ねてみると、結城君はきょとんとして首を傾げた。なんでって、なんでだろう?

「だって私、初めの頃結城君の顔もちゃんと見た事無かったよ。同じクラスなのに」
「保健室通ってたからね」
「サボってるんだと思ってた。本当に体調悪かったんだって今なら分かるけど、みんなきっと今もそう思ってるよ?」
「最近はだいぶ良くなったから教室に居る方が増えたんだけどなぁ。穂高さんのおかげで思い出して苦しくなる事もなくなったから。穂高さんの居る教室は息がしやすいよ」
「……結城君」

 学校はどこにいても橘さんとの思い出にあふれてて思い出して辛いって前に結城君が言っていた。それが自分の心を責め始めるきっかけになって、頭が感情に引っ張られて過呼吸になる予感を呼び寄せるから、そうなると結城君は教室に居られなくて保健室へと避難していたのだ。
 私も同じ状況に居たから分かる。原因から遠ざかる事でぴたりと治ったりするけれど、きっかけが突然現れるこの状況は、ずっと爆弾を抱えたまま生きている様な苦しさがあって、それはきっと味わった本人にしか分からない事だ。
 私は悩みが解決した事でしばらくそんな状況にはなってないし、治ったと言っても良いくらいなんだけど、結城君の方はどうなんだろうとずっと気になっていたから。だから、それが良くなったって聞けてホッとした。私達、良い方向に進んでる。