明日もずっと君の隣に

「目、真っ赤」

 鼻を啜る穂乃果ちゃんが私に言う。「なんで澪も泣いてんの」って。
 なんでだろうね。

「心が外に出る時って涙も出てくるんだよね。なんでだろう」
「分かんない。けどすっごい久しぶりにこんな泣いた……我慢してた分かも」
「我慢?」
「そ。言いたかったけど我慢してたから。澪、すぐ傷つくじゃん。どうやって言えば良いか分かんなくてずっと我慢してた」
「穂乃果ちゃん……ごめんね、私が弱かったばっかりに」

 ううん、と、穂乃果ちゃんは首を横に振る。

「私も弱かった。向き合う勇気が足りなかった。ごめんね、澪」

 そして、にこっと笑うと穂乃果ちゃんは切り替える様にハキハキとした口調で言った。

「で、最近体調どうなの?」
「良くなってきたよ。多分……もう大丈夫」

 心の中に巣食っていたどろどろと重たい嫌な気持ちが、今はすっきりとなくなっていた。ずっと蓋をして飛び出さないように押し込めていた思いが今、ついに全て涙と共に外へ出ていったのだと思う。今はもう、私とみんなの新しい明日を思って胸は弾めるくらいに軽い。

「全部結城のおかげ?」
「え……いや、みんなが受け入れてくれたからだよ。全部言えたし、穂乃果ちゃんも言ってくれたし」
「そのきっかけを作ったのが結城?」
「…………」

 これは、何を言っても駄目だろう。

「……うん。結城君が、こうやって出来る様になるまで支えてくれたから」

 そうだ、夜になったら結城君に報告しないと。上手くいったよって。それでありがとうって。これも全部結城君のおかげで迎えられた結果だから。

 ふと、妙な視線を感じて穂乃果ちゃんを見ると、穂乃果ちゃんが「ふーん」と口にしながら、にやにやと私を見ていた。そして、

「好きなんだ、結城の事」 
「……え?」
「顔に書いてる。恋する乙女の顔してる」

 なんて爆弾発言と一緒に、「鏡見る?」と、自分の手鏡を差し出してくるから慌てて断った。