私が本当の事を言えないでぐずぐずしてるのを、みんなは秘密主義だと受け取ってたんだ。
確かに秘密主義と言えるのかもしれない。本当の気持ちを隠す為に抱いてる感情を押し殺す時もあるし、話の流れに合わせて嘘をつく事もある。
ずっと私はみんなに言えないものを抱えてこの場所に居たんだから、それを察した時、そういう言葉で私を表されるのは間違いじゃないと思うし、ショックを感じるくらい驚いたけど、肯定的に受け取られてる方だとは受け止められた。みんなは隠してる事に気付いてたのに、それが私だと受け入れてくれてたって事だから。
——でも、穂乃果ちゃんのそれは違った。
『そうなれるほど信頼されてないんだよ』
その一言で、全てが覆された様にも感じた瞬間だった。あの時の沈黙は、“え、そういう事なの?”と、穂乃果ちゃんに正解を求める心の声がみんなの中で呟かれた事で生まれたものに感じたから。
すぐに穂乃果ちゃんがうまくまとまる様に話を持って行ってくれたけど……そこには私に対する棘が潜んでいたように思う。
『裏表なくて私は好きだよ』
あれは、私に対しての言葉だったんだと思うんだ。このグループに居続ける為に本当の自分を隠して、この場に合わせたハリボテの私でしか話さない私に対しての……。
……穂乃果ちゃんは、そんな私に気づいて嫌な感情を抱いてる。
そう考えると心が騒ついて仕方なくて、また私の勘違いかも、ただ心配して庇ってくれただけかも、なんて昨日みたいには考えられなくて。
“昼休み、一緒にご飯食べて”
気づけば結城君にメッセージを送っていて、それに結城君が“分かった”と返事をくれた事で、ほっと心を少しだけ落ち着かせる事が出来た。
ようやく四時間目の授業の終わりのチャイムが鳴り、昼休みを迎えたと同時に席を立ったその時だった。
「澪、どこ行くの?」
穂乃果ちゃんに声を掛けられて、思わず身体に緊張して力が入る。
聞かれて当然だ。いつも一緒に食べてるんだから。
「えっと、今日は別の約束があって」
「あぁ。結城?」
「……うん」
嫌に鋭い雰囲気を醸し出す穂乃果ちゃんだ。変に嘘をつくのも可笑しいと思ってそのまま答えると、穂乃果ちゃんは私の返事に眉根を寄せて嫌そうにする。けれど、
「そ。行ってらっしゃい」
と、それ以上は何も言わず、興味をなくした様にそっぽを向いてしまい、声を掛けようか悩んだものの……やっぱりそんな事は出来なくて。
結局私は、結城君と約束した保健室へと逃げる様にその場を離れる事しか出来なかった。
——逃げられる場所があって良かった。
そんな風に思う私は変わらず臆病者で、卑怯者だけど、穂乃果ちゃんと向き合う勇気なんてこれっぽっちも無かったんだから仕方ない。
全部、私が悪いんだ。私が招いてしまった事なんだから。



