「じゃあ先週の続きから、穂高」
——高校に入学して、隣の席の子と仲良くなった。彼女の名前は酒井穂乃果ちゃん。誰にでも気さくに声を掛ける元気で明るい女の子、それが彼女のイメージだった。良い子と隣の席になれたなと、私はすぐに彼女の事が好きになって、一緒に行動する様になって、段々彼女のおかげでクラス内の友達が増えていって……そこまでは本当に楽しかった。私ってツイてるなとも思っていた。
「……穂高? 聞いてるか?」
でも、段々学校に慣れてくるにつれて彼女は少しずつ変わっていった。入学当初真っ黒だった髪は今では二色に染まっていて(バイカラーというらしい)、派手なピアスと長い爪がキラキラと光り、すっかり彼女の見た目は別人の様になっていた。後に知った事だけど、元々の彼女は見た目も言動も派手なタイプだったらしい。
「穂高!」
「澪、呼ばれてるよ!」
「! あ、すみませんっ」
大きな声で名前を呼ばれてハッと我に返ると、クラス中の視線が私に集まっていた。気づけば授業はとっくに始まっていて、次の問題について指名されたらしい雰囲気に慌てて教科書を確認しようとすると、
「ん? お前大丈夫か? 顔真っ青だぞ」
「……え?」
誰の話?ともう一度クラス中を見渡すとみんな私の事を見つめたままだったので、そこでようやく私の事だと気が付いた。その時点でノロノロとした思考回路に、これは確かに本調子では無いなと感じる。
「体調悪いのか?」
「……あー……」
「いや、いい。無理しないで保健室行ってきな」
「……はい。じゃあ行ってきます」
今の今まで自分では全く自覚が無かったけれど、どうやら私は今真っ青な顔をして見るからに体調不良であるらしい。勧められるがままに立ち上がるとくらりと眩暈がした。もしかしたら疲れてるのかもしれない。
「一人で行けるか? 足元に気を付けろよ」
「……はい」
足元の確認までされるなんて、一体今の私はどんな状態に見えているのだろう。真っ青な顔で足元も覚束ない様な、今にも気絶でもしそうな感じ?
『毎日自分がダサ過ぎて鏡見るたび気絶しそうだった。ようやく私こんにちはって感じ』
気絶という単語でふと思い浮かんだのは、髪を染めた穂乃果ちゃんに似合ってるねと伝えた時の、嬉しそうな彼女から返ってきた言葉。
——高校に入学して、隣の席の子と仲良くなった。彼女の名前は酒井穂乃果ちゃん。誰にでも気さくに声を掛ける元気で明るい女の子、それが彼女のイメージだった。良い子と隣の席になれたなと、私はすぐに彼女の事が好きになって、一緒に行動する様になって、段々彼女のおかげでクラス内の友達が増えていって……そこまでは本当に楽しかった。私ってツイてるなとも思っていた。
「……穂高? 聞いてるか?」
でも、段々学校に慣れてくるにつれて彼女は少しずつ変わっていった。入学当初真っ黒だった髪は今では二色に染まっていて(バイカラーというらしい)、派手なピアスと長い爪がキラキラと光り、すっかり彼女の見た目は別人の様になっていた。後に知った事だけど、元々の彼女は見た目も言動も派手なタイプだったらしい。
「穂高!」
「澪、呼ばれてるよ!」
「! あ、すみませんっ」
大きな声で名前を呼ばれてハッと我に返ると、クラス中の視線が私に集まっていた。気づけば授業はとっくに始まっていて、次の問題について指名されたらしい雰囲気に慌てて教科書を確認しようとすると、
「ん? お前大丈夫か? 顔真っ青だぞ」
「……え?」
誰の話?ともう一度クラス中を見渡すとみんな私の事を見つめたままだったので、そこでようやく私の事だと気が付いた。その時点でノロノロとした思考回路に、これは確かに本調子では無いなと感じる。
「体調悪いのか?」
「……あー……」
「いや、いい。無理しないで保健室行ってきな」
「……はい。じゃあ行ってきます」
今の今まで自分では全く自覚が無かったけれど、どうやら私は今真っ青な顔をして見るからに体調不良であるらしい。勧められるがままに立ち上がるとくらりと眩暈がした。もしかしたら疲れてるのかもしれない。
「一人で行けるか? 足元に気を付けろよ」
「……はい」
足元の確認までされるなんて、一体今の私はどんな状態に見えているのだろう。真っ青な顔で足元も覚束ない様な、今にも気絶でもしそうな感じ?
『毎日自分がダサ過ぎて鏡見るたび気絶しそうだった。ようやく私こんにちはって感じ』
気絶という単語でふと思い浮かんだのは、髪を染めた穂乃果ちゃんに似合ってるねと伝えた時の、嬉しそうな彼女から返ってきた言葉。



