「あ……えっと、結城君は?」
「教室に戻ったわよ。今日は始めから出るって言ってたから。何か用事?」
「お礼を言えて無かったなと……助けて貰ったのに」
「そっかそっか。言ってあげるといいわよ、きっと喜ぶから。結城君が居て良かったわね」
「……はい」

 そう。結城君が居て良かった。居てくれなかったらもっと辛い思いをしていただろうから。どんな対応が一番良かったのか分からないけど、きっと結城君の対処の仕方は間違ってなかっただろうし的確だったと思うから。
 それは先生の態度を見ていても分かった。結城君が居て今の私の状態を見て、それなら大丈夫だと納得している様に見えたから。

「結城君、ずっと声を掛けてくれてたんです。長く吐くんだよって。声に合わせて息をして、そしたら段々落ち着いたんです」
「そうね、その対応で間違ってないわ」
「私、こんな事初めてだったから……でも結城君はすごく冷静でした。なんか、慣れてるみたいな……なんでだろう」
「…………」

 ニッコリ笑ったまま、先生は何も言わなかった。
 そうか、これはプライバシーの話になるのかもしれない。

「……もう少し休んだら教室戻ります。で、本人に聞いてみます」

 そう言うと、先生は、「それが良いわ」と優しく笑った。