嫌だな……嫌だ。

「でね、エグいスベり方してんの本人全く気付いてなくて、無理過ぎてそのまま帰った」
「つよ〜」
「まずあのクソダササングラスなんとかしろよ」
「マジ何のご職業ですかって感じ」

 ガヤガヤ、ゲラゲラ、矢継ぎ早に飛び交う会話。これは一体何の話? その人が可哀想な話? あなたが人を傷つけた話? それともSNSで出会った知らない人と遊んで来た自分のちょっとした自慢話?

「マジでそれ〜!」と大声で笑うけど、一体何が面白いの?

「? (みお)、どした?」

 隣の彼女が首を傾げて私を見ていてギクリとした。やばい、顔に出ちゃってたのかも。

「もしかしてあんま興味なかった? ベラベラ語ってごめーん」
「あ、いや別に」
「そういえば澪ってこういうの全然乗ってこないよね」
「ね。シラける〜」
「え? そうかな……?」

 どうしよう。早く終われ、早く終われ。この時間よ、早く終われ。

「……でも、私もそのサングラスは無いと思うわ」
「だよねー!」

 あぁ……またやってしまった。

 キーンコーンカーンコーン

 チャイムが鳴ると同時に先生が教室に入ってくると、昼休みの女子会はお開きとなり、やっと嫌な時間から解放された。
 ……けれど、私の心の中には言いようのないモヤモヤした気持ちが渦を巻いている。
 だって今日もまた同意してしまった……本当はこんな事したくないのに。サングラスがダサくても別にどうでもいい。だって私には関係ない話だし、人の服装にいちいちケチつけてゲラゲラ笑える程のセンスも持ってない。私の私服だってきっとこの人達から見たらクソダサの部類になるのだろうと思うと人の事を笑える様なメンタルではいられなかった。

 でも、それがこのグループの決まりなのだ。お決まりの流れ、お決まりの話題。ここに居る限りそんな私でいないといけなくて、じゃないと私の居場所は無くなってしまう。心情と言動があべこべの自分で生きるのはとても苦しい毎日だった。