目覚めるとそこはあたたかい場所だった。シミなんて一切ない真っ白な布団は私の胸にまで掛けられていて、私は眠気なまこで上体を起こす。窓から差し込む光が酷く眩しくて目を細めた。同時に涙が溢れてしまったのは何故だろう。

「ああ……そうだね」

自分のことだから分かってしまったんだ。けれど、これは誰にも言わない私だけの秘密。言ってはいけない、私だけの枷。
どうしようもなく幸せなのに、どうしようもなく悲しい。
矛盾した感情が私の中に沸き上がって、霧がかかったようにぼんやりとしていた思考が働き始める。とりあえずパジャマから着替え、廊下に出た。無数の部屋とどこまでも続く廊下。迷ってしまいそうだ。
僅かにある窓からの光だけの薄暗い道に「リネン室」の看板を見つけ中に入った。なるほど、誰かがこの状態を保っているのかはたまた自動で保たれているのか分からないが、一面白の壁とまるでお店のように整えられたアニメティグッズは自室の布団と同じく純白である。気持ちがいい。

「タオル……と、歯ブラシ……っと!あと他に何かいるっけ?」

うーんと唸ってみたものの、まだこの世界の構造を理解していなさ過ぎて、そもそも何処に何があるのかすら知らなかった。能天気な私は、足りなくなったらまた来ればいっか~とスキップで自室に戻った。
その後はあまり覚えていない。気づけばもう宵らしく、窓の外はぽつんぽつんと小さな明かりが灯るだけ。
明日は誰かに会えるかな。早く会いたいなぁ。
自分の使命も果たさなければいけない。明日からきっと忙しいから今日は早めに寝ちゃおう。
おやすみ