玄関のドアを開けた瞬間、靴を履いたままのゆかは、勢いよく袋から菓子パンを取り出した。
おばあちゃんの靴は、ない。
今日は老人会の集まりが公民館であるって朝から言っていたから、それに行っているのかもしれない。
ゆかは部屋の中には入らないで、玄関に立ったままさっき買ってきたメロンパンを口の中に入れた。
美味しい、とか、甘い、とかそういったものは何も感じなくて、操られたロボットが機械的に口の中に押し込んでいる、そういった感覚。
靴を脱ぎ捨て部屋の中に入る時には、すでに菓子パンを2個も食べ終わっていた。
水を用意しなきゃ。
台所に向かって、コップがゆらゆらになるまで水道水を注いでくると、テーブルの前にあぐらをかいた。
普段、水道水なんて絶対に飲まないし、ちゃんとケトルとか、やかんで沸かして水は飲むようにしている。
だけど、こういった悪いスイッチが入っている時は、そんなことどうでも良くなって、お湯を沸かすことさえ待てなくなってしまうからいつも水道水。
飲めさえすれば、なんだっていいってしか考えられなくなる。
口の中に菓子パンを押し込んだせいで、息が詰まりそうになったのを、水道水で思いっきり流し込んだ。
そして、また別の菓子パンを口の中へと詰め込んでいく。
あんなにたくさん買ってきていたはずの菓子パンが、瞬く間に消えていくのが信じられない。
1個、また1個、と袋から次々と取り出して両手で詰め込んでいる自分は、人間ではないかもしれない。
異常な行動をしている自覚はあるのに、そんな自分をコントロールできなくて、別の誰かに身体を支配しているみたいにしか感じられない。
気がつくと、嗚咽をあげて泣いていた。
涙のせいなのか、食べかすのせいなのか、グチャグチャになっていく顔をティッシュで押さえた。
毎日こうだ。
こんな行動やめたい、二度とやりたくない。
何度も、何度も心の底から願っているのに、自分は同じようにスイッチが入って、この異常な行動を繰り返してしまう。
私、何のために毎日生きているんだろう。
目の前にはゴミの山ができていって、どんどんと部屋が散乱していった。
手もベタベタしていて気持ち悪いって思っているのに、だからといって食べることをやめることは出来ない。
ゆかは食べ続けた。
何時間も、何時間もひたすら食べ続けた。
薄暗い部屋の中に、外からの雨音だけがかすかに聞こえていた。
おばあちゃんの靴は、ない。
今日は老人会の集まりが公民館であるって朝から言っていたから、それに行っているのかもしれない。
ゆかは部屋の中には入らないで、玄関に立ったままさっき買ってきたメロンパンを口の中に入れた。
美味しい、とか、甘い、とかそういったものは何も感じなくて、操られたロボットが機械的に口の中に押し込んでいる、そういった感覚。
靴を脱ぎ捨て部屋の中に入る時には、すでに菓子パンを2個も食べ終わっていた。
水を用意しなきゃ。
台所に向かって、コップがゆらゆらになるまで水道水を注いでくると、テーブルの前にあぐらをかいた。
普段、水道水なんて絶対に飲まないし、ちゃんとケトルとか、やかんで沸かして水は飲むようにしている。
だけど、こういった悪いスイッチが入っている時は、そんなことどうでも良くなって、お湯を沸かすことさえ待てなくなってしまうからいつも水道水。
飲めさえすれば、なんだっていいってしか考えられなくなる。
口の中に菓子パンを押し込んだせいで、息が詰まりそうになったのを、水道水で思いっきり流し込んだ。
そして、また別の菓子パンを口の中へと詰め込んでいく。
あんなにたくさん買ってきていたはずの菓子パンが、瞬く間に消えていくのが信じられない。
1個、また1個、と袋から次々と取り出して両手で詰め込んでいる自分は、人間ではないかもしれない。
異常な行動をしている自覚はあるのに、そんな自分をコントロールできなくて、別の誰かに身体を支配しているみたいにしか感じられない。
気がつくと、嗚咽をあげて泣いていた。
涙のせいなのか、食べかすのせいなのか、グチャグチャになっていく顔をティッシュで押さえた。
毎日こうだ。
こんな行動やめたい、二度とやりたくない。
何度も、何度も心の底から願っているのに、自分は同じようにスイッチが入って、この異常な行動を繰り返してしまう。
私、何のために毎日生きているんだろう。
目の前にはゴミの山ができていって、どんどんと部屋が散乱していった。
手もベタベタしていて気持ち悪いって思っているのに、だからといって食べることをやめることは出来ない。
ゆかは食べ続けた。
何時間も、何時間もひたすら食べ続けた。
薄暗い部屋の中に、外からの雨音だけがかすかに聞こえていた。