スーパーにつくとずぶ濡れになっていたのは、自分だけで急に恥ずかしさが込み上げてきた。
店内に響き渡る大きな呼び込みの声は耳障りだし、商品を照らしている照明の明かりさえも鬱陶しく思えてきて、目を背けたくなった。
「あらー。ずいぶんと濡れているわね。傘は持っていなかったの?」
買い物カートを押している、見知らぬお婆さんに声をかけられた。
心配をしている、というよりも、むしろドン引きしているような声のトーンで。
「いや、持ってはいたんですけど、雨がひどくて・・・・・・」
なんて陳腐な嘘なんだろうって我ながら呆れたけれど、適当な返事を返したゆかは、苦笑いを浮かべながらお婆さんをすり抜けるようにして追い越した。
雨に濡れた部分の洋服の色が変わっているのに気がついて、真っ白とか目立たないのを着てくればよかったって少し後悔したけれど、今さらそんなこと思ったって仕方ない。
冷房の効いた店内は寒くて、早く外に出たいって思うけれど、別人の自分がそれを許してくれない。
食べたい。
食べたい。
食べたい。
ゆかが目当てにしているコーナーは、店の奥の方にあることは前から知っていた。
頭の中が「食べたい」という考えに支配されて、磁石に吸い付けられたかのように、菓子パンコーナに向かって脇目も触れず、直行した。
メロンパン。
チョコパン。
アンパン。
デニッシュパン。
次から次へと買い物かごに入れてしまう自分の手の動きを、どんなに頑張っても止めることができない。
本当は値段くらい確認した方がいいのは分かっていたけれど、そんなことよりも「食べたい」という気持ちが勝って、値段を見る余裕さえない。
カゴの中があっという間に菓子パンでいっぱいになってしまった。
女性が一人でこんなにも大量に買っていたら、絶対に周囲から変って思われるだろうなっていうことは理解はしているけれど、思ったところで、買うことをやめることができない自分は異常なのかもしれない。
ふと、菓子パンコーナーから隣のコーナーに視線をずらしてみると、お菓子の山が目に入った。
すでにカゴは溢れそうなくらいパンパンになっていたけれど、ゆかはカゴをもう一つ手に取ると、獲物を見つけたライオンみたいに、それを見逃さない。
ポテチ。
クッキー。
チョコレート。
シリアル。
お菓子をかごに入れながら、自然と涙が溢れて出てきてしまった。
ここが家ではないことくらいわかっていた。
だけど、ポロポロと流れてくる涙を止めることができなくて、視界がぐにゃりと歪んでいく。
自分、本当、何してるの。
頭おかしいんじゃないの。
こんなこと、普通の人は絶対にしないよ。
両手いっぱいのままレジの会計に並んでいると、一気に惨めさが襲ってきて、どうしようもないくらい胸が締め付けられてしまう。
いっそのこと誰でもいいから「こんなに買うのはやめなさい」って止めに入ってくれないかな。
そんな期待さえ抱いてしまう。
だけど、そんなことを言ってくれる人は、誰もいない。
一人、また一人とレジが進んでいって、いざ自分の番になると思わず発狂してしまいそうになった。
目を見開いてこぼれ落ちてきそうな涙を必死でこらえながら、レジでの精算を終わらせたけれど、袋に食べ物を詰め込む手が震えて、うまく中に入れることができない。
一生懸命冷静さを保とうとするけれど、頭の中ではずっと同じ言葉が浮かんできて消えてくれない。
食べたい。
食べたい。
食べたい。
スーパーの出口に向かって逃げるようにして向かう今の自分の姿は、なんて哀れなんだろう。
両手一杯に袋を持ったゆかは、もう一度全速力で走って家へと向かった。
雨なんて、気にもならなくて、傘をさそうっていう余裕は一ミリもなかった。
店内に響き渡る大きな呼び込みの声は耳障りだし、商品を照らしている照明の明かりさえも鬱陶しく思えてきて、目を背けたくなった。
「あらー。ずいぶんと濡れているわね。傘は持っていなかったの?」
買い物カートを押している、見知らぬお婆さんに声をかけられた。
心配をしている、というよりも、むしろドン引きしているような声のトーンで。
「いや、持ってはいたんですけど、雨がひどくて・・・・・・」
なんて陳腐な嘘なんだろうって我ながら呆れたけれど、適当な返事を返したゆかは、苦笑いを浮かべながらお婆さんをすり抜けるようにして追い越した。
雨に濡れた部分の洋服の色が変わっているのに気がついて、真っ白とか目立たないのを着てくればよかったって少し後悔したけれど、今さらそんなこと思ったって仕方ない。
冷房の効いた店内は寒くて、早く外に出たいって思うけれど、別人の自分がそれを許してくれない。
食べたい。
食べたい。
食べたい。
ゆかが目当てにしているコーナーは、店の奥の方にあることは前から知っていた。
頭の中が「食べたい」という考えに支配されて、磁石に吸い付けられたかのように、菓子パンコーナに向かって脇目も触れず、直行した。
メロンパン。
チョコパン。
アンパン。
デニッシュパン。
次から次へと買い物かごに入れてしまう自分の手の動きを、どんなに頑張っても止めることができない。
本当は値段くらい確認した方がいいのは分かっていたけれど、そんなことよりも「食べたい」という気持ちが勝って、値段を見る余裕さえない。
カゴの中があっという間に菓子パンでいっぱいになってしまった。
女性が一人でこんなにも大量に買っていたら、絶対に周囲から変って思われるだろうなっていうことは理解はしているけれど、思ったところで、買うことをやめることができない自分は異常なのかもしれない。
ふと、菓子パンコーナーから隣のコーナーに視線をずらしてみると、お菓子の山が目に入った。
すでにカゴは溢れそうなくらいパンパンになっていたけれど、ゆかはカゴをもう一つ手に取ると、獲物を見つけたライオンみたいに、それを見逃さない。
ポテチ。
クッキー。
チョコレート。
シリアル。
お菓子をかごに入れながら、自然と涙が溢れて出てきてしまった。
ここが家ではないことくらいわかっていた。
だけど、ポロポロと流れてくる涙を止めることができなくて、視界がぐにゃりと歪んでいく。
自分、本当、何してるの。
頭おかしいんじゃないの。
こんなこと、普通の人は絶対にしないよ。
両手いっぱいのままレジの会計に並んでいると、一気に惨めさが襲ってきて、どうしようもないくらい胸が締め付けられてしまう。
いっそのこと誰でもいいから「こんなに買うのはやめなさい」って止めに入ってくれないかな。
そんな期待さえ抱いてしまう。
だけど、そんなことを言ってくれる人は、誰もいない。
一人、また一人とレジが進んでいって、いざ自分の番になると思わず発狂してしまいそうになった。
目を見開いてこぼれ落ちてきそうな涙を必死でこらえながら、レジでの精算を終わらせたけれど、袋に食べ物を詰め込む手が震えて、うまく中に入れることができない。
一生懸命冷静さを保とうとするけれど、頭の中ではずっと同じ言葉が浮かんできて消えてくれない。
食べたい。
食べたい。
食べたい。
スーパーの出口に向かって逃げるようにして向かう今の自分の姿は、なんて哀れなんだろう。
両手一杯に袋を持ったゆかは、もう一度全速力で走って家へと向かった。
雨なんて、気にもならなくて、傘をさそうっていう余裕は一ミリもなかった。