りえが公園で「学校に行っていない」と教えてくれたあの日から、ゆかとりえはたまに公園で会うようになっていた。

ハンバーガーショップには、あの日以来行けなくなったけれど。

学校の話はしないし、家庭の話も、友達の話もしない。

だからお互いのことを知っているのは名前だけだったけれど、それでもゆかにとっては今話すのことのできる唯一の友達だったし、りえにとっても自分がそんな存在になれていたらいいなって思っていた。

だから今日もいつもみたいに公園に行けば会えると思っていたけれど、何時間待ってもりえは公園には現れなかった。

1人でベンチに座っていると、たまに吹く風がとても冷たくて身体がブルって震えてしまう。


「りえ、今日は来ないのかな・・・・・・」


ゆかは小さくため息をついて立ち上がり、ゆっくりと公園の出口へと向かった。

最近はこうやって公園まで出かける頻度も増えたからか、祖母の小言も少しだけ減った気がするし、家の中の空気が前よりも明るくなった気がする。

母も「ゆか、今日はどうだった?」ってゆかの調子も聞いてくるようになって、会話もかなり自然になってきたと思う。

もちろん今でも「学校」という言葉が使われることはないけれど。

そこら辺はまだ、気を遣われているという感覚はあったから、早くどうにかしなければっていう気持ちが消えたわけではない。

家に真っ直ぐ帰ろうとしていたけれど、母にトイレットペーパーを買ってくることを頼まれていたことを思い出して、急いでスーパーの方へと逆戻りをした。

いつものスーパー、のはずだった。

だけど、カゴを持って店内に入った瞬間、ゆかは今視界に入ったのは何か自分の見間違いではないかって、目を疑った。


店の奥の食料品売り場近く。


りえの左右に警察が何人もいて、その中央でりかが目を真っ赤にして、泣いている。

その近くにはりえのお母さんだろうか、ハンカチで目元を押さえている女性が、憔悴しきった様子で立ち尽くしていた。


ゆかはぎゅっと唇を噛み締め、気がついたら咄嗟にカゴをその場に置いて、りえの元へと走っていた。


「りえ!!」

「ゆかちゃん・・・・・・。ゆかちゃん、ごめん」

「りえ、どうしたの? 何があったの?」

「ごめん、私、万引きした。だから警察に捕まった」


ゆかは言葉を失った。


どうして、なんで、りえが万引きなんかを・・・・・・・?


「関係ない方はここに立ち寄らないでください」と警察は迷惑そうは表情を浮かべたまま、淡々とした口調でゆかをあしらった。


「友人なんです。りえの友人なんです」

「今こっちは仕事中なんですよ? 見てわかりませんか? ほら、向こうに行って」


そういって警察はゆかを押しのけると、下を俯いたままのりえと一緒に「スタッフオンリー」と書かれた部屋の奥へと消えていってしまった。

今見たのもはたった数秒の出来事だったのかもしれないけれど、ゆかにはとても長い時間、大きなスクリーンで衝撃的な映画を観ていたような、そんな感覚がした。