翌日、ゆかがいつも通りアルバイトに行くと、みんながサーっと自分の周りから離れていく気がした。
きっと気のせいだろうって思ったけれど「お疲れさまです」って言っても、誰も返事をしてくれなくて、これは気のせいなんかじゃないって確信した。
自分が一体何をしただろうか?頭の中で一生懸命考えてみるけれど、何も思い当たることがなくて、どんどん不安ばかりが膨らんでいく。
「聞いた? ゆかって毎日お父さんと一緒にやってるらしいよ。ありえなくない? かなりドン引きなんだけど」
一瞬、空耳が聞こえたのかと思った。
だけどその次の言葉を聞いて、本当に聞こえているのだって思った。
「今、噂になってるよね。ななみが昨日ゆかと夜ごはん食べた時に、ゆか泣きながらななみに相談したらしいよ。そんなこと言われても反応に困るよね。てか、キモすぎ」
少しだけ前向きになれていたゆかの心がぐちゃぐちゃになっていって、目の前が霞んで見える。
信じたくなかったけれど、昨日の夜、ななみ先輩に話したことがみんなに広まっている。
ななみ先輩に、裏切られた。
あんなに親身になって聞いてくれていると思っていたのに、心の中では嘲笑っていたのかと思うと、なんで自分は簡単に話してしまったのだろう、と激しい後悔に襲われた。
ゆかは荷物をまとめると、逃げ出すようにしてそのまま更衣室を飛び出した。
一瞬でも早く、この場から消え去りたかった。
悔しくて、悲しくて、しんどいはずなのに、今日は一筋として涙が出てこない。
ゆかはまっすぐ見ているはずなのに焦点が定まらず、ぼんやりとした状態で外を歩いていると、なんとなくスーパーが目に止まった。
いつもは気にならない、近所にある小さなスーパー。
自動ドアが開くたびに、電気で明るく照らされている店内が、眩しいほどに輝いて見える。
欲しいものなんてないはずなのに、思わず吸い寄せられるように、店内の中へとフラフラと入ってしまう。
久しぶりに入ったスーパーは陳列が少し変わっていて、前はよく行っていたお菓子コーナーが奥の方に移動していた。
甘いもの、食べたいな。
ゆかはチョコレートコーナーに行き、適当に目についたチョコレートを手に取った。
中にキャラメルが入っていて、いかにも甘そうな海外のチョコレートバー。
いつもならカロリーとかが気になって、絶対にこんなの食べないけれど、今日だけは許される気がした。
チョコレートだけを1つ手に取り、会計を済ませると、店の外にあるベンチに座ってパッケージを開けた。
数ヶ月ぶりのチョコレートの香り。
ゆかが大好きだった、甘くて、だけどちょっぴりビターな、心を踊らせる香り。
ゆっくりと口に運んで、舌の上で大切に溶かす。
何これ。美味しい。
ゆかの中で大きな衝撃が走った。
今までずっと我慢していた、禁断の味。
身体と心の飢えを一瞬で満たしてくれる、魔法のような味。
もっと、食べたい。
これだけじゃ足りない。
ゆかは数秒でチョコレートを食べ終わると、小走りでスーパーの中へと再び戻った。
我に返った時には、ゆかのトートバックにはチョコレートとクッキー、だんご、ポテトチップスが入っていた。
こんなに買い込んでしまったことを、とてつもなく後悔するけれど、どうしても我慢できなかった。
早く家に帰って食べようって思ったけれど、どうしても家まで待てる気がしなくて、近くにある公園の影に隠れた。
食べたい。
食べたい。
食べたい。
今まで感じたことのないような、食べ物への激しい欲求。
そして空腹感。
無我夢中になりわずか数分で食べ終わった瞬間、一気に現実に引き戻された。
私、なんで食べちゃったんだろう。どうして我慢できないんだろう。
だけど、もっと食べたい。
ゴミを捨て、別のスーパーに向かって歩き始めた自分の姿が化け物のように感じた。
どうしよう、私は・・・・・・
過食症になってしまったかもしれない。
きっと気のせいだろうって思ったけれど「お疲れさまです」って言っても、誰も返事をしてくれなくて、これは気のせいなんかじゃないって確信した。
自分が一体何をしただろうか?頭の中で一生懸命考えてみるけれど、何も思い当たることがなくて、どんどん不安ばかりが膨らんでいく。
「聞いた? ゆかって毎日お父さんと一緒にやってるらしいよ。ありえなくない? かなりドン引きなんだけど」
一瞬、空耳が聞こえたのかと思った。
だけどその次の言葉を聞いて、本当に聞こえているのだって思った。
「今、噂になってるよね。ななみが昨日ゆかと夜ごはん食べた時に、ゆか泣きながらななみに相談したらしいよ。そんなこと言われても反応に困るよね。てか、キモすぎ」
少しだけ前向きになれていたゆかの心がぐちゃぐちゃになっていって、目の前が霞んで見える。
信じたくなかったけれど、昨日の夜、ななみ先輩に話したことがみんなに広まっている。
ななみ先輩に、裏切られた。
あんなに親身になって聞いてくれていると思っていたのに、心の中では嘲笑っていたのかと思うと、なんで自分は簡単に話してしまったのだろう、と激しい後悔に襲われた。
ゆかは荷物をまとめると、逃げ出すようにしてそのまま更衣室を飛び出した。
一瞬でも早く、この場から消え去りたかった。
悔しくて、悲しくて、しんどいはずなのに、今日は一筋として涙が出てこない。
ゆかはまっすぐ見ているはずなのに焦点が定まらず、ぼんやりとした状態で外を歩いていると、なんとなくスーパーが目に止まった。
いつもは気にならない、近所にある小さなスーパー。
自動ドアが開くたびに、電気で明るく照らされている店内が、眩しいほどに輝いて見える。
欲しいものなんてないはずなのに、思わず吸い寄せられるように、店内の中へとフラフラと入ってしまう。
久しぶりに入ったスーパーは陳列が少し変わっていて、前はよく行っていたお菓子コーナーが奥の方に移動していた。
甘いもの、食べたいな。
ゆかはチョコレートコーナーに行き、適当に目についたチョコレートを手に取った。
中にキャラメルが入っていて、いかにも甘そうな海外のチョコレートバー。
いつもならカロリーとかが気になって、絶対にこんなの食べないけれど、今日だけは許される気がした。
チョコレートだけを1つ手に取り、会計を済ませると、店の外にあるベンチに座ってパッケージを開けた。
数ヶ月ぶりのチョコレートの香り。
ゆかが大好きだった、甘くて、だけどちょっぴりビターな、心を踊らせる香り。
ゆっくりと口に運んで、舌の上で大切に溶かす。
何これ。美味しい。
ゆかの中で大きな衝撃が走った。
今までずっと我慢していた、禁断の味。
身体と心の飢えを一瞬で満たしてくれる、魔法のような味。
もっと、食べたい。
これだけじゃ足りない。
ゆかは数秒でチョコレートを食べ終わると、小走りでスーパーの中へと再び戻った。
我に返った時には、ゆかのトートバックにはチョコレートとクッキー、だんご、ポテトチップスが入っていた。
こんなに買い込んでしまったことを、とてつもなく後悔するけれど、どうしても我慢できなかった。
早く家に帰って食べようって思ったけれど、どうしても家まで待てる気がしなくて、近くにある公園の影に隠れた。
食べたい。
食べたい。
食べたい。
今まで感じたことのないような、食べ物への激しい欲求。
そして空腹感。
無我夢中になりわずか数分で食べ終わった瞬間、一気に現実に引き戻された。
私、なんで食べちゃったんだろう。どうして我慢できないんだろう。
だけど、もっと食べたい。
ゴミを捨て、別のスーパーに向かって歩き始めた自分の姿が化け物のように感じた。
どうしよう、私は・・・・・・
過食症になってしまったかもしれない。