ゆかは自分の部屋のベッドの中にうずくまり、誰にも見つからないように息をこらしていた。
 
頭の上まで深く、毛布をかぶせたまま。
 
敵に狙われた、子うさぎみたいになっているのかもしれない。
 
小さく、小さく、丸まっていた。
 
ノックをすることなく部屋のドアが突然、ゆっくりと開いた。
 
静かに歩く足音が、ゆっくりと自分の方に近づいてくるのが、気配でわかる。
 
絶望と、恐怖と、不安で全身に力が入ってしまい、ぴくりとも動くことができない。


「ゆか、さぁ行こうか」
 

勢いよく毛布がめくられて、無防備な姿になったゆかは、ギュッと目をつぶった。


「誰かたすけて」
 

声に出したつもりだけど、喉の奥に言葉が詰まって、何も言えていなかった。
 
笑みを浮かべた父に手を繋がれたゆかは、足音を立てないように、静かに1階のリビングへと向かった。
 

今からいつもの「儀式」が始まる。
 

手慣れた手つきで父は洋服を脱ぎ始め、立ち尽くすゆかのパジャマもなんの躊躇いもなく脱がせ始めた。
 

そして、2人の関係が、始まった。


「あぁ、死にたい」
 

ゆかは自分という存在を、ないことにして、お人形になった。