カラスくんによると、なぜか最近、数学の問題が苦手になってきてしまったらしい。元々苦手ではあったものの、最近の授業は特に、なんだそうだ。
私もあまり勉強が得意なわけではないが、エンカレで勉強を得意になる方法を教えてもらってから、少しづつついていけている。カラスくんのことは応援したいし、先程関係が縮まったわけだし、応援しないわけがない。せめて誕生日までは、カラスくんが苦手を克服しているといいな、と思った。
というわけで、毎日放課後に図書室で少し勉強をすることになった。私は胸の高鳴りを抑えきれないまま、放課後を待った。

「…あ、なつ来た」
なんとカラスくんの方が先に来ていたらしい。私は、
「もちろん、来るなんて当たり前でしょ!だって、その…」
と言って、勇気を出す。いざとなって口に出すのは、なんだか恥ずかしい。
「…付き合ってる?わけ?だし?」
「…いや、待て待て待て待て待て待て待て待て」
カラスくんが、全力というか、もうこれ以上ないくらいのスピードで止める。
「え、ちょっと待って?俺、付き合うなんて一言も言ってないよね?」
「え、え?だって、今日食堂行く時、付き合ってって言ったよね?」
カラスくんが、ザ・やっちまったという顔をして、崩れ落ちる。
「…やっぱ、なつポジティブだよ。もーまじで…」
「なになに、だってカラスくんが言ったじゃん。ポジティブってなんで…」
「付き合ってってのは、勉強に付き合ってほしい、ってことだよ!」
「ベンキョウニ、ツキアッテホシイ…」
ただいま色見なつ、読み込み中です。と言わんばかりのカタコト具合だったと思う。そして私は、ようやく理解する。
「…あー!!!!!えーー!?!?うぉゎわわわわわわっ!?!?」
「なんかごめん…」
「いや、カラスくんが悪いなんてわけじゃないよ!」
自分が意味のわからない言葉を発していたことに気付き、私も崩れ落ちる。
「私の勘違いでした…あーもうなんでポジティブ思考はこうなのかなぁ、ネガティブの方が変じゃないのかなぁ、いやでもネガティブだって疲れるのになんでそんなこともわかんないんだろ私ってほんとにダメな人間だな、あーあ…」
「いやネガティブ出てるって」
カラスくんに声をかけられ、ネガティブから脱出する。

付き合っていなかったとしても、これは大切なことだ、ということに気が付いた。なんで、今まで(かたく)なにエンカレのことしか大切でないようなことを思っていたんだろう。これだって、エンカレに並ぶような、立派なものなのに。
あぁ、なんか、ここにずっといたい。
エンカレが家だとしたら、これはボロい秘密基地っぽい感じだ。それでも、楽しい方は。
「…カラスくん」
「なに」
「…カラスくんが大切なのは、変わりないよ」
勘違いから、大切なものへと気が付いた。そんなおかしな出来事が、私を明るい未来へ連れ出そうとしてくれていた。