「なんで、どうして……」

 片付け四日目の早朝。私は「け」の文字を見て、言葉を失っていた。
 一日目が「た」。
 二日目が「す」。
 三日目が「け」。
 これからから分かることは、二つ。
 一つ。以前、私が予想した「タスマニアの単語が出来る」という考えは不正解という事。
 二つ。これから配達されるひらがなが、なんとなく分かるという事。

「……はぁ」

 無意識のうちに、こぼれたため息。それは私の心に、重く静かにのしかかった。

「た、す、け……。ここまで来たら、次は”て”だよね?」

 そして完成する「助けて」の言葉。
 私は、二度目のため息を零す。

「おばあちゃん、”助けて”って……何?」

 何か助けてほしい事があったの?そんなの、全然知らなかった。こんなに近くにいたのに。

「いつ、助けて欲しかったのかな……。誰かが助けてくれたのかな?」

 希望的観測をした、その時。昨日、自分が倒れた時の事を思い出す。
 配達員さんがスーパーで買い物をしてくれた間――起き上がれない私は、一人ここにいた。動きたかったけど、体が重すぎてどうにもならない。まるで自分の体じゃないみたいだった。
 あの時に感じたのは――不安よりも「恐怖」。
 動けないまま、私は悪化してしまうもしれない。このままずっと一人だったら、どうしようって思ってた。
 結果的に、配達員さんが来てくれたから、私は安心出来た。
 だけど……おばあちゃんは?
 おばあちゃんは、誰かに助けて貰えたの?

「もしかしたら、誰にも助けて貰えなかったかもしれない……。その時、おばあちゃんは、どんなに心細かっただろう。それに、おばあちゃんの気持ちに気づいてあげられないなんて……。私、バカだ。大バカだ。なんのためにスマホを持ってるのっ」

 自分に嫌気がさして、ポケットに入ってるスマホを強く叩いた。何度も、何度も。もしかしたらスマホが壊れてしまうかもって思うほどに。
 だけど、その時。