不思議がる私を見て「さっき言ったじゃないですか」と、また優しい目をした配達員さん。靴を脱いで、何事もなく部屋に入り、未だ倒れている私の隣に座った。そしてビニール袋からドリンクを取り出し、私の頬にピトリとつける。

「ひゃ」
「さっき”しばらく一人で大丈夫ですか?”って言ったのは――俺がスーパーに行く間、一人で大丈夫ですか?って意味です。すみません、紛らわしくて。あ、これ……飲めますか?」
「い、いただきます」

 配達員さんに上半身を支えられ、なんとか体を起こす。そしてキンキンに冷えたスポーツドリンクを、乾いた口の中へ少しずつ流し込んだ。

「おいしい……」
「良かったです」
「……っ」

 あまりに優しい声で「良かった」なんて言うものだから、私の涙腺が少しだけ緩んだ。看病されると弱くなるって言うけど、本当にその通りで――私は改めて、配達員さんの存在に感謝するのだった。

 そんな私は、一時間も経つと無事に復活出来た。念の為、すぐお母さんに電話して病院に行ったけど、検査の結果は問題なし。その日の内に、家に帰ることが出来た。

「もう〜音羽!だから”気をつけて”って言ったのに。肝が冷えたわよ!」
「お母さん、ごめんね……」
「本当、無事で良かったわ。片付けは、もうお父さんお母さんに任せて。あなたは明日から少し休みなさいね。今日までありがとうね」
「……うん」

 分かった――と返事をしたものの。ここで私が「おばあちゃんの荷物の謎解き」を諦めるわけがなかった。
 そして案の定、翌日に回復した私は、おばあちゃんの家に朝早くから来ていた。
 涼しい内に作業しよう!と意気込んで、一番に手を伸ばしたのは……昨日、配達員さんが届けてくれた段ボール。

「私の予想の“タスマニア”は合ってるかな〜?」

 少しウキウキしながら段ボールを開けた私は、中身を確認した時、思わず絶句してしまった。
 なぜなら――
 箱の中にあったのは「ま」ではなく「け」の文字。私に見せつけるように、それは段ボールの真ん中に横たわっていたのだった。