――少しの間、配達員さんを見つめていると、パッと目を逸らされた。耳が赤くなっている。
あ、そうか。
きっと配達員さんも、この家の暑さにやられているに違いない。倒れる前に、早く外に出してあげないと。

「あの、私の事はいいので……もう行ってください」
「しばらく一人で大丈夫ですか?」
「はい。ありがとうございました」

 お礼を言った私を見て、配達員さんは帽子を被り直す。そして帽子のツバを持ったまま浅くお辞儀をし、急いで玄関から出て行った。その後ろ姿を見て「迷惑かけちゃったなぁ」と反省する。

「荷物を持ってきてくれるだけでもありがたいのに、生存確認まで……。こんな私をおばあちゃんが見たら、絶対に呆れてるよね」

 溜息をつきながら、少し首を動かす。すると、顔の横に段ボールがあった。きっと、今日の分の荷物に違いない。その段ボールは、いつもと同じサイズ。ということは……中身は相変わらず、ひらがなブロックだろうな。

「開けたい。けど……体が動かないよ」

 知らない間に相当ムリしてしまったと、今更ながらに自覚した。時計を見ると、まだお昼を過ぎたばかり。お母さんが来るのは夕方だから、それまで一人きりだ。

「この状態で一人って……。私、大丈夫かなぁ」

 なんて思っていた時。誰かが玄関に入って来た音が聞こえる。お母さんにしては早すぎる。まさか、強盗!?

「今、動けないのに……っ」

 勇気をだして、音のする方へ瞳を動かす。すると、そこには――
 大きなビニール袋いっぱいに、熱中症に効くドリンクや食べ物を買って来てくれたらしい、配達員さんが立っていた。

「え……?」
「戻りました、すみません。遅くなってしまって」
「ど、どうして……ここに?」