「お届け物です」
「……本当に来た」
荷物が届き始めて、二日目。
昨日の配達員さんが言った通り、今日もおばあちゃんからおばあちゃん宛に、荷物が届いた。昨日と同じサイズの段ボール。中身は……やっぱり軽い。もしかして、またひらがな?
全ての意識が段ボールに注がれている私。対面している配達員さんの事を、すっかり忘れていた。昨日よりも帽子の被り方が浅い配達員さんの表情。ゆえにハッキリ見える、ポカン顔。
「え……あ!すみません。サインですよね?昨日も忘れちゃってて」
一旦段ボールを足元に置き、配達員さんに謝った。すると彼は手をブンブンと振って、自分がここにいるのはサインがほしいからではないと、私に訴える。
え、でも……。じゃあ、なんで自転車に戻らないんだろう?
「お仕事、いいんですか?」
「……あ!」
疑問を浮かべた私を見て、配達員さんは「しまった!」という顔をした。私からツイと目を逸らしたまま、浅くお辞儀をする。そして足早に自転車を漕いで、一気に遠くに行ってしまった。
「なんだったんだろう……。
あ、そうだ。段ボール!」
例のごとく、テープをビリリとはぎとる。中にあったのは――
「やっぱり!ひらがなの木のブロック!
今度は……”す”?」
昨日が「た」。今日が「す」。きっと明日も、ひらがなのブロックが来るよね?
た、す。
それに続くのは――
「た、す……まにあ。タスマニア?」
一番に地名が浮かんだ。けど、きっと違うよね。でも、おばあちゃんは旅行好きだった。若い頃に海外旅行に何度も行ったと、嬉しそうな顔でよく話してくれたっけ。
タスマニアは、案外ハズレではないかも――と思ったところで、とある事を思い出す。それは、玄関にある段ボールのこと。全部同じサイズの段ボールが六個。ということは、おばあちゃんは以前もひらがなのブロックを買ったって事?
「部屋を片付ければ、買った物が出てくるかも。よし、がんばるぞ!」
気合を入れ直し、熱中症まったなしの家で、一心不乱に片づけをこなす。だけど、いくら片づけを頑張っても、その日の内に、ひらがなブロックが出てくることはなかった。
そして、その夜――ため息をつく私を、不思議そうに見るお母さん。洗濯物を回す際に、私の服が汗でぐっしょり濡れている事に気づいた。するとお母さんは、困った顔で「あのね音羽」と、私の名前を呼ぶ。
「熱中症になるまで頑張らないでね?暑くなったら、すぐに帰ること。いい?」
だけど私は性懲りもなく、翌日も片付けに夢中になってしまった。
そして熱中症警戒アラートが鳴り響く中、片付けに励んだ私は――
「あ、もう……ダメ」
ついに熱さにやられて、意識を手放したのだった。
「……本当に来た」
荷物が届き始めて、二日目。
昨日の配達員さんが言った通り、今日もおばあちゃんからおばあちゃん宛に、荷物が届いた。昨日と同じサイズの段ボール。中身は……やっぱり軽い。もしかして、またひらがな?
全ての意識が段ボールに注がれている私。対面している配達員さんの事を、すっかり忘れていた。昨日よりも帽子の被り方が浅い配達員さんの表情。ゆえにハッキリ見える、ポカン顔。
「え……あ!すみません。サインですよね?昨日も忘れちゃってて」
一旦段ボールを足元に置き、配達員さんに謝った。すると彼は手をブンブンと振って、自分がここにいるのはサインがほしいからではないと、私に訴える。
え、でも……。じゃあ、なんで自転車に戻らないんだろう?
「お仕事、いいんですか?」
「……あ!」
疑問を浮かべた私を見て、配達員さんは「しまった!」という顔をした。私からツイと目を逸らしたまま、浅くお辞儀をする。そして足早に自転車を漕いで、一気に遠くに行ってしまった。
「なんだったんだろう……。
あ、そうだ。段ボール!」
例のごとく、テープをビリリとはぎとる。中にあったのは――
「やっぱり!ひらがなの木のブロック!
今度は……”す”?」
昨日が「た」。今日が「す」。きっと明日も、ひらがなのブロックが来るよね?
た、す。
それに続くのは――
「た、す……まにあ。タスマニア?」
一番に地名が浮かんだ。けど、きっと違うよね。でも、おばあちゃんは旅行好きだった。若い頃に海外旅行に何度も行ったと、嬉しそうな顔でよく話してくれたっけ。
タスマニアは、案外ハズレではないかも――と思ったところで、とある事を思い出す。それは、玄関にある段ボールのこと。全部同じサイズの段ボールが六個。ということは、おばあちゃんは以前もひらがなのブロックを買ったって事?
「部屋を片付ければ、買った物が出てくるかも。よし、がんばるぞ!」
気合を入れ直し、熱中症まったなしの家で、一心不乱に片づけをこなす。だけど、いくら片づけを頑張っても、その日の内に、ひらがなブロックが出てくることはなかった。
そして、その夜――ため息をつく私を、不思議そうに見るお母さん。洗濯物を回す際に、私の服が汗でぐっしょり濡れている事に気づいた。するとお母さんは、困った顔で「あのね音羽」と、私の名前を呼ぶ。
「熱中症になるまで頑張らないでね?暑くなったら、すぐに帰ること。いい?」
だけど私は性懲りもなく、翌日も片付けに夢中になってしまった。
そして熱中症警戒アラートが鳴り響く中、片付けに励んだ私は――
「あ、もう……ダメ」
ついに熱さにやられて、意識を手放したのだった。