「配達?おばあちゃんの家に?」

 なんと、もう亡くなったおばあちゃんの家の前に、荷物を持った配達員の人が立っていた。チャイムを鳴らし「いないなぁ」と呟く声が聞こえる。私は急いで、配達員さんに駆け寄った。

「この家に荷物ですか?誰からだろう」
「あ、……」
「あの?」

 私を見るやいなや、ピタリと固まり動かなくなってしまった配達員さん。しまった、急に話し掛けちゃったから、そりゃビックリするよね。
 近づいた距離を、少しずつ離していく。するとは配達員さんは「あ」と言って、まるで正気に戻ったかのように説明を始めた。

「こちらのお宅に、荷物です。ご依頼も宛先も、白井トミ子様です」
「え!おばあちゃんから!?」
「は、はい」

 帽子を目深にかぶった配達員さんは、私の声に驚いたらしい。肩をビクリと、大きく震わせた。心の中で謝罪しつつも、荷物が気になって仕方ないので、穴が開くほど段ボールを見る。

「おばあちゃん、何を買ったんだろう」
「あ、あの?」

 私を見て、困惑している配達員さん。帽子のせいで顔はあまり見えないけど、私と同じくらいの年齢に見えた。夏休み中だから、短期でアルバイトをしてるのかな?
 そんな事を思っていると「あの」と、配達員さんが私に尋ねる。

「トミ子さん、ここの所いないようですが……。どこか旅行に行かれてるんですか?」
「え?」
「夜ここを通っても真っ暗だから……」
「あぁ、そうだったんですね」

 どうやら、配達員さんはおばあちゃんの事を気に掛けてくれていたらしい。
 八十二歳で一人暮らしのおばあちゃん。誰にでも優しかったから、きっと配達員さんにも、すごく優しかったんだろうなぁ。
 配達員さんに、おばあちゃんが亡くなった事を伝えた。これから家を片付け、いずれ売却するという事も。
 すると配達員さんは「え」と言ったきり、俯いて喋らなくなった。ショックを受けてるのかな?だとしたら、不謹慎かもしれないど嬉しい。

「おばあちゃんが亡くなった事を悲しんでくれているのなら、ありがとうございます」
「え……」
「それだけおばあちゃんの事を好きでいてくれたって事ですよね?それが嬉しい。だから、ありがとうございます」
「……っ」

 すると配達員さんは俯いたまま、グイッと――私に小柄な荷物を渡した。そして「明日も来ます」と言う。
 ん?
”明日も来ます”?
 不思議に思っていると、配達員さんが何やら会社専用らしきスマホを操作する。そして、とんでもない事実を、私に伝えた。