『どうして“待ち人”の名前にしたんですか?』
『え、あ……』
『?』
なかなか答えなかった配達員さん。結局「その時の気分ですかね」って言ってたけど……。何か、はぐらかされた気もする。
「って、考えすぎかなあ?アカウントの名前なんて、皆パパッと決めるだろうしね。
それより、早く返信しなきゃ」
再びスマホに目を落とした時。私の肩を、誰かがトントンと叩く。ビックリした衝撃で、ソックスが床の上を華麗に滑ってしまった。
「わぁ!?」とコケそうになる私を、配達員さんが器用にキャッチする。二人とも玄関に倒れはしたものの、幸運にも無傷で済んだ。
「ビックリしました」
「す、すみません……」
私を抱きとめたまま、配達員さんは深く息を吐いた。密着した状態だから、心臓がドクドクと大きな音を立てているのが分かる。
そして、そのドクドクが少しづつ私に伝染している気がして……。気恥ずかしくなった私は、配達員さんから体を離す。
「本当に、ありがとうございましたっ」
「……」
「あ、あの……?」
私が退けた後も、尚も座り続ける配達員さん。玄関の隅を見て、一向に動く気配がなかった。
何をしてるんだろう?
配達員さんに倣って、玄関の隅を見る。すると、そこにあったのは――
「あれは、ひらがなのブロック!」
六個のひらがなブロックが、玄関の端に並べてあったのだ。
「今まで気づかなかった。こんな下の方にあったなんて」
「二人で玄関に倒れたかいがありましたね。それにしても、そのひらがなは……?」
私が手にしたひらがなを見て、不思議そうな顔をした配達員さん。このブロックをずっと探していたのだと、私は簡潔に説明した。
「片付け初日、段ボールが六枚玄関に立てかけてあったんです。その段ボールは、配達員さんが持ってきてくれる段ボールと同じサイズでした」
「つまり――トミ子さんは前にもひらがなを買ったことがある、という事ですか?」
「私は、そう思いました。だから探してたんです。六個のひらがなを、ずっと」
まさか、こんな所にあったなんて。昔から、探し物は案外近くにあるって言うけど……本当にその通りだ。
「早速、六個のひらがなを並べていいですか?」
「もちろん。では俺は、今日のひらがなが何か、荷物を開けて確認しますね」
「はい、お願いします」
そして、二人で手分けして、ひらがなを並べた。そして今まで届いたひらがなも合わせて、全てを並べてみる。
『え、あ……』
『?』
なかなか答えなかった配達員さん。結局「その時の気分ですかね」って言ってたけど……。何か、はぐらかされた気もする。
「って、考えすぎかなあ?アカウントの名前なんて、皆パパッと決めるだろうしね。
それより、早く返信しなきゃ」
再びスマホに目を落とした時。私の肩を、誰かがトントンと叩く。ビックリした衝撃で、ソックスが床の上を華麗に滑ってしまった。
「わぁ!?」とコケそうになる私を、配達員さんが器用にキャッチする。二人とも玄関に倒れはしたものの、幸運にも無傷で済んだ。
「ビックリしました」
「す、すみません……」
私を抱きとめたまま、配達員さんは深く息を吐いた。密着した状態だから、心臓がドクドクと大きな音を立てているのが分かる。
そして、そのドクドクが少しづつ私に伝染している気がして……。気恥ずかしくなった私は、配達員さんから体を離す。
「本当に、ありがとうございましたっ」
「……」
「あ、あの……?」
私が退けた後も、尚も座り続ける配達員さん。玄関の隅を見て、一向に動く気配がなかった。
何をしてるんだろう?
配達員さんに倣って、玄関の隅を見る。すると、そこにあったのは――
「あれは、ひらがなのブロック!」
六個のひらがなブロックが、玄関の端に並べてあったのだ。
「今まで気づかなかった。こんな下の方にあったなんて」
「二人で玄関に倒れたかいがありましたね。それにしても、そのひらがなは……?」
私が手にしたひらがなを見て、不思議そうな顔をした配達員さん。このブロックをずっと探していたのだと、私は簡潔に説明した。
「片付け初日、段ボールが六枚玄関に立てかけてあったんです。その段ボールは、配達員さんが持ってきてくれる段ボールと同じサイズでした」
「つまり――トミ子さんは前にもひらがなを買ったことがある、という事ですか?」
「私は、そう思いました。だから探してたんです。六個のひらがなを、ずっと」
まさか、こんな所にあったなんて。昔から、探し物は案外近くにあるって言うけど……本当にその通りだ。
「早速、六個のひらがなを並べていいですか?」
「もちろん。では俺は、今日のひらがなが何か、荷物を開けて確認しますね」
「はい、お願いします」
そして、二人で手分けして、ひらがなを並べた。そして今まで届いたひらがなも合わせて、全てを並べてみる。