「では、話してください。あなたの悩みを」
「っ、はい」

 私は思い切って、胸にためていた全ての思いを、配達員さんに打ち明けた。

 おばあちゃんに連絡をとらず、疎遠になっていたこと。
 そのおばあちゃんからの荷物が「たすけて」というメッセージになること。

 時折、言葉に詰まる私を前にしても、配達員さんが先を急かすことはなかった。そればかりか――全てを話し終えた時に、私にこんな提案をしてくれる。

「では、今日の荷物を二人で開けますか?」
「え……?」
「あなたが抱えきれない悩みは、俺が九割もちます。だから、ここでやめないで。諦めちゃダメです。トミ子さんが何を伝えたかったのか、最後まで追求しましょう」
「でも……」

 九割って……。それ、もう、ほとんどだよ?

「私の悩み、きっと重いです……」
「俺は配達業に携わってますから。重いものを持つのは、慣れっこですよ」
「……ぷっ、ふふ」

 配達員さんの優しさが嬉しくて、思わず笑ってしまう。すると、なぜか顔を隠すように帽子をかぶり直した配達員さんが「じゃあ、開けますね」と。腕の筋肉に力を入れて、段ボールを開いていく。

「……っ」

 中に入っている物の、おおよその見当はついている。だけど……改めて目にするのが、怖い。直視できなくて、思わず強く目を瞑った。
 すると配達員さんが、私の手に自身の手をかざす。そして、

「大丈夫です。俺がここにいますから」

 と私を後押ししてくれた。

「はい……っ」

 意を決して、目を開ける。
 そして、段ボールが大きな口を開けた時。
 中に入っている物を、私たちは、ついに確認する。そこにあったのは――

「あぁ……。”助けて”が、出来ちゃった」

 中に入っていた物。
 それは私が想像した通り、ひらがなの「て」なのだった。