「この写真、懐かしいなぁ」
 玄関の壁に飾られている写真を見る。そこには、まだ幼い私とおばあちゃんが、二人仲良く写っている写真があった。

「おばあちゃん、あっという間だったなぁ」

 二週間前に亡くなった、おばあちゃんの事を思い出す。いきなり心臓発作を起こし、帰らぬ人となってしまった。当時は悲しみに暮れていた家族だけど、おばあちゃんが住んでいた家を、空き家のままにしておくわけにもいかない。
 そこで家族が出した結論が――売却だった。
 だけど売却する前に、やらないといけない事がある。それが、片付け。
 絶賛夏休み中の、高校一年生の私。部活もなければ、受験勉強もない。そんな若い労働力は、家族にとって貴重な資源だったらしい。今日からしばらくの間、私は片付けをするため、おばあちゃんの家に通う事となった。

「あっつー……」

 電気は、既に止まっている。そのためエアコンはもちろん、扇風機を使うことも出来ない。五百円くらいで買ったハンディ扇風機が、唯一、私に微風を送っていた。

「あぁ~、もうダメ!スーパーでアイスを買わなきゃ干からびる!!」

 窓を全開にしたまま、財布とスマホを持って玄関に行く。もちろん、玄関も開けっ放し。ここで閉め切ろうもんなら、帰って家に入った瞬間に、熱気で倒れる自信がある。

「アイス、アイス~!」

 早くアイスを食べたくて急いだ……のがいけなかった。玄関に立てかけてあった段ボールに、つま先が当たってしまう。それらはガタガタ音を立て、ドミノのように倒れてしまった。

「さ、最悪……!」

 段ボールをこのままにして、すぐにでもアイスを買いに行きたいのは山々だけど……。あとから合流するお母さんに「何よこれ」と怒られかねない。火種は、早めに消しておくに限る。
 ため息をつきながら、一枚一枚、段ボールを元あったように立てかける。すると、とある事に気づいた。