「あっち陰陽師じゃん。俺は高校生で当主なんか絶対やだね」
月御門と影小路は、陰陽道二大大家(たいか)といわれている。
「御門は十三で襲名しとるぞ。小路もそろそろじゃないかのお」
「ぜってえやだ。俺は成人するまでは好きに生きさせてもらう」
和仁が宣言しても、祖父は鼻で笑う。
「ふん。その年で使役も持たぬとは。まったく天瀬の自覚のない」
「ちびの頃からじいさんに修行と称して死にかけの目に遭わされてきて嫌気がさしただけなんだけど?」
「青いのお」
「うるせえくそじじい」
――そんな暴言を吐いて和仁は祖父の部屋を出た。自分の部屋に戻って机に突っ伏す。
「なんで……夢宮が魔女なんだ……」
和仁が永久子の言葉をかけらも疑わなかったのは、自分が祓魔師の家柄というのが大きい。
常日頃から妖怪とかそういったのを相手にしているからだ。
さすがに魔女や魔法使いはこの国の管轄下ではないから会ったことはなかったけど――
「……祓魔師(おれ)の彼女が魔女って……どう考えても、どうにもなんねえ……」
はは……と乾いた笑いがもれる。
「いや、俺今まで魔女なんて種族に会ったことないし、マジで夢宮が中二なだけかも」
はっとして顔をあげた和仁。
明日、ちょっとだけ深く訊いてみよう。
+++
「魔女としての力? そうだねー、軽くこういうのとか」
ぱっと開いた永久子の手の上に、ぽっと炎がともる。
「!? け、消して!」
「うん。あんま見られちゃまずいよね」
和仁、墓穴。
(夢宮が魔女じゃない確信を得たかったのに、異能を持ってることは確定しちゃった……)
「和仁? なんか今日も苦悩してない?」