「ねえ、デートしない?」
「え?」
「日曜日がさ、約束の日でしょ? デートして、最後にお互いの答え出すの」
永久子は笑顔だった。和仁も、つたないながら笑顔を返した。
「うん、いいよ」
――約束の日、日曜日。
永久子が行きたいと言ったのは、大きな公園の中にある植物園だった。
二人並んで歩くけれど、会話はない。和仁の答えは決まっている。
だが、それを口にするのは勇気がいった。
永久子にとって天敵ともいえる和仁の存在を、和仁の家族を、永久子はどうとらえるのだろうか――。
「知ってたの、あたし。和仁が、天瀬の家の人だって」
突然、永久子は口を開いた。
立ち停まった永久子に遅れて、和仁も歩みを止める。
「え――」
天瀬の人、とはどういう意味だ。和仁が危惧するそのまま――?
「和仁に告白されたときは、悪いけど疑ったの。あたしが夢宮の魔女だって知って、狩りに来たのかもしれないって。でもあのときの和仁の間抜けな顔見たら、本当にあたしのこと知らないんだって思って……賭けに出たの」
「賭け……?」
「うん……和仁があたしでいいって言ってくれたら、あたしは家でもなんでも捨てて一緒に行こうって」
家でもなんでも捨てて。永久子が、家よりも和仁を選ぶということ。
「――だめだよ」
和仁は落ち着いた声でそう言っていた。
その言葉を聞いて、永久子は哀し気に顔をゆがめ、それでもほほ笑んだ。
「……そうよね。天瀬が魔女なんかを迎え入れるわけないわよね――」
「違う。家を捨てるなんてだめだ。永久子は、祝福されて幸せにならないと」
「それは……あたし、フラれたってこと?」
「それも違う。俺が永久子を天瀬に迎え入れるようにする」